ノンプロット~抑うつになりました~

友利日香梨

第1話 初診

 無理をしているという自覚はあった。そろそろ心療内科に行かなければと思ってはいた。しかし世の心療内科は予約必須なところが多い。なるべく近場で予約不要か必要でも電話でない方法で予約の取れるところを探していた。

 そんな中、迎えた平日のクリスマス。朝起きて、もう駄目だと思った。職場に午前休む連絡をして目星をつけていた病院に向かった。

 当時の自分は(今もではあるが)何でも自分のせいにしていた。自分がデブスだから、自分が仕事ができないから、自分が家事ができないから、自分の頑張りが足りないから、自分が駄目だから。だから物事が上手く行かない。そんなことを四六時中考えて過ごしていた。

 デブスだから痩せて、ヘアメイクやお洒落を頑張って少しでもまともな見た目にならなければいけない。結婚式を控えていたが、こんなデブスな私の式に人を呼ぶなんて申し訳ないと本気で思っていた。ダイエットと節約のために食事はスープで済ませていて、今思うとどうしてデブだと思っていたのかわからないくらい痩せていた。普段Mサイズで丁度いい私が、Mサイズがぶかぶかになっていた。

 3カ月ほど前に婚約者(現在の夫。以下、夫)と同棲を始めたが、毎日私が掃除洗濯料理をしなきゃと思いながらも上手く回せず、自分のせいで夫に良い生活をさせられないと嘆いていた。夫はそんなことを私に求めたことはない。私が勝手に私に課していた。

 上記のことを医師に伝えた。正直、その頃の記憶はあやふやでなんと言われたかは覚えてない。ただ仕事を休職するための診断書には「抑うつ状態のため」と記されていた。

 カウンセリングの受診を勧められたため、次回の診察とカウンセリングの予約を取った。この時はいつか仕事に復帰すると思っていたので、次回の予約は仕事のない曜日に取った。処方箋を受け取り、薬局で薬をもらい家に帰った。

 帰宅後、職場に休職する旨を伝えた。上司(現在は元だか)はたしか酷く驚いていたと思う。その後、人事からも電話が来て

「すごく仕事ができると聞いている」

と言ってくれた。そのまま受け取ればいいのに、私は

(気をつかわせてしまった)

と絶望していた。人からの良い言葉を曲解することしかできなかったのだ。

 数日後、人事の担当者が家に来た。本当はカフェ等で会うのが良いのだが、この頃の私は長時間外にいるのが怖くてそれが難しく、担当者にお願いして家に来てもらうことにした。1人で話すのは怖かったため夫に同席してもらった。そして簡単に現状を話し、休職のための手続きをした。

 休職すれば元気になれる。もう記憶にはないが、この頃の私は多分そう思っていたはずだ。私以外の人もきっとそう思っていたはずだ。しかし、実際には無理だった。休職から数か月後、私は夫に頼み込んで退職をさせてもらうことになった。

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