いくつもの世界で君を想う

オレンジの金平糖

(1)

「お姉ちゃんはミカのことなんでも知ってるんだね!」


 自慢げな笑顔で「私はなんでも知ってるんだから」と嘯く。私が子どもの頃、そうやって言った人の真似をして。あの日別れ際に受け取った、古びた封筒に入った手紙。それが今の私を形作り、動かしている。


「なんでも? なんでも知ってるの?」


 背中に馴染み始めた赤いランドセルの肩ベルトをぎゅっと握ったミカは、純真無垢な瞳を私に向けた。「じゃあミカのこと何か当ててみて!」なんと答えればいいか少し迷って、思い出す。確か、


「今日席替えしてサッカーの上手なユウキくんの隣になった、とか?」


 驚いたような顔をした後、ミカは嬉しそうに「大正解!」と拍手した。友人関係も徐々に広がってきて、学校が楽しくてしかたがないと思っているのがよくわかる。極めて順調。ミカの笑顔がそう伝えている。


 そろそろ時間だから帰るね、とミカが手を振り、去っていった。ミカが駆け寄ってくるのも、手を振って去っていくのも既に日常の一部になっていた。ミカを見送った私は静かに砂の落ち切った砂時計をひっくり返した。



 私は今日も、呪われた二十二歳を生きている。

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