第13話神の国へ

こちらはリッパーシリーズ3機と〈パラサイトブレイド〉。

シンキのゲートをくぐり、戦場へ足を運ぶ。

そこには〈ビーストキメラ〉と〈ペガサス〉が戦いあっていた。


サムは右腕の刃を展開し、〈ファング〉の機体に奇襲を仕掛ける。


「一打」


一撃で仕留めるべく一気に急接近し、コックピットから両断した。


爆散する機体から素早く離れ、地面に着地する。


「リッ、リッパーシリーズ!? どうしてここに!?」


「自分の母国を救いに来た。ただそれだけだ」


シンキのパイロットが驚きを隠せないのに対して冷静な声で話しかける。


「母国だと! 反逆者がえた口か!」


それは最もな言葉だ。

何人者の仲間を殺してきた裏切り者が言っていい発言ではない。


「口より操縦そうじゅうに専念した方が良いよ。死にたくないでしょ」


割り込むように〈チェーンソーリッパー〉を操縦するケンの言葉、それを聞いて黙り込むパイロット。

そんな者を他所に4機の機体は先に進んで行く。


「それにしてもトローお兄ちゃん、先にこの国に来てるけどどうしたんだろう?」


「おそらく今も戦っているのでしょう。もしくは……いえ、トローに限ってそれはないですかね」


アリスの質問にキーカーは受け答えすると、急に弟の死が過ぎる。

そんな訳はないと信じつつ先に進むと、黒き翼を持つ機体〈サタナエル〉が〈ペガサス〉を蹴散らしていた。


「ふん、来たな。わざわざ殺されに来るとは、地獄に落としてくれる!」


「その声は! 今度こそ私達があなたを殺してあげる! 覚悟しなさい!」


アリスの叫びを聞いて構えを取るリッパーシリーズ達に対して、武力で示す天使は〈サイコモーション〉に念動力を伝達させリミッターを解除する。

バックパックのブースターの出力を上昇させ、残像を残しながら〈サウザンドリッパー〉に突っ込んで行く。

そこにサムが全身の刃にビームを展開し、長い鉤爪を受け止めた。


「お前達〈ファング〉が操った軍。間抜けと思うか? 容易いと思うか? 俺もその1人だった。だがなぁ。平和の神を信じて良かったと今でも思う! いくぞ! これが俺の剣技だ!」


「平和の神などと言うまやかし、ここで断つ!」


〈パラサイトブレイド〉のパワーを超える〈サタナエル〉に、腕パーツの関節が悲鳴を上げる。


「おっと。私達を忘れてもらっては困りますよ」


キーカーはトラップワイヤーを堕天使に撃ち放つと〈ビーストキメラ〉が突然現れ、ヒートホークで弾かれた。


「天使様、我々も加勢させていただきます」


「感謝する。これよりリッパーシリーズを全滅させるぞ。覚悟はいいな」


『おぉぉぉぉぉぉ!!』


天使と崇める少女の号令に、この場にいる〈ファング〉達は一斉に吠えた。


「兵器を持つ限り、あなた達は死なないといけません。3人共、りますよ」


「「「了解」」」


キーカーの指示にサム、アリス、ケンは納得し、機体の刃を武器で〈ビーストキメラ〉に攻撃を開始する。

〈チェーンソーリッパー〉のチェーンソーから繰り出される回転する刃を〈ファング〉のパイロットは高く飛び越え、上空からアサルトライフルを乱射する。

硬い装甲によって弾丸は弾かれ、逆にジェット噴射で腕パーツが突っ込んで来た。


「し、しまった!? ぎゃあー!?」


切り裂かれた機体は悲鳴と共に爆散、ケーブルに繋がった腕が装着された。


残像を残しながらヒートホークを振り下ろす敵が仕掛けたトラップワイヤーにまんまと引っかかり、薄ら笑いをするキーカー。

そこに野獣達が次第に集まっていく。


「まったく。私達の邪魔をしないでいただきたい」


咆哮のサウンドを流しながらアサルトライフルの銃口を向けられると、トラップワイヤーをビルに突き立てモーターを起動、素早く上昇し銃弾を躱す。

さらに建物から引き抜き勢いよく横に振る。

両断された〈ビーストキメラ〉達は爆散し、現場を騒然とさせた。


弾き合う刃と刃、〈パラサイトブレイド〉の光をまとった刃は次第に〈サタナエル〉の鉤爪を溶かしていた。


「お前は! お前だけは!」


天使の繰り出すビットが〈千本の刃サウザンドビットで撃ち落とされる様は敵とはいえ哀れに思える。


「たとえあなたが私より強いとしても、仲間が多くいても、絶対に勝てない!」


「なんだと! 偽者の分際で私に勝てるものか! オリジナルである私にはなぁ!」


「偽者とかそんなの関係ない! だって私には家族がいるから!」


兄であるシジの優しい笑顔がフラッシュバックし、アリスは抑えていた寂しさを爆発させ涙を流しつつビットを巧みに操り次々と〈ビーストキメラ〉を撃破していく。

信者の死を胸に秘め、少女は〈パラサイトブレイド〉に向けて拳を唸らせる。

だが。


なんとリミッター解除の負担が腕に集中し、砕け散ったのだ。


「こ、こんな時にぃぃぃぃぃ!?」


「堕天使よ。これでさらばだ」


その隙にサムは右足の刃をすべて展開し相手コックピットに蹴りを与える。

突き刺さった刃が中まで貫通し、〈サタナエル〉を停止させるのだった。


デンジョーとバーズは警察に連行される中、天使の生存を願うばかりだった。


ビーレ大統領を救出し兵士達は一安心するも、怯えた様子で見つめてくるのでかなりの恐怖を植え付けられたのだろう。


無期懲役むきちょうえきが確定し戦闘車に乗せられたトローは手錠を付けたまま隣りにいる兵士の首を鎖で絞め殺害、拳銃を拾い運転している者の頭を撃ち抜き車両を停止させた。


奪われた私物を回収し、手錠の鎖を戦闘車の装甲に叩きつけ破壊する。

スマホを取り出しキーカーに連絡、助けを待った。


一方その頃ケンはサムとの別れを惜しんでいた。


「本当に行っちゃうの?」


「あぁ、俺はたくさんの罪を犯した。だからせめて母国に裁かれることを、望んでいるのかもしれない」


どこまでも正義感が強い人だと感じ、急に寂しくなる。

そこにアリスが大きくため息を吐いた。


「仇、あなたが処刑させようが、永遠に閉じ込められようがどうでもいいことだけど。シジお兄ちゃんにとむらいぐらいしてほしかった」


「アリス、トローを迎えに行ったら帰りますよ。もう時間がありませんからね」


キーカーの指示に彼女は「分かった」と一言そう言って兄妹と共に場を離れて行った。


『気が済んだか、さっさと出て来てもらおう』


ディガーの通信にサムは笑みを浮かべながら手を上げながら、コックピットを出るのだった。



その後シンキは戦争を起こした元凶として株が暴落し、責任として国であることを放棄した。


他国に土地を売り渡したのである。

国民達の移住は避けられず、差別などが彼らを苦しめることになる。

そしてサムはどうなったのか。


彼は刑務所で密かに処刑されたがその前に優秀なパイロットとしての才能と正義感を見込まれ人工知能サムライとして生まれ変わった。

現在世界で軍人不足であり、パイロットを育てるためレジェンドと言われる人工知能が必要なっていた。


「さあいくぞ、戦いを終わらせるために」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る