四十、ダンジョン調査依頼 2

 ダンジョンへと到着。


「これがダンジョンですか? なんだか普通の洞窟っぽいですね」


 アリスが目の前にあるダンジョンの入り口を見ながらそんなことを呟く。誰もが初めてダンジョンを見たときに思う感想である。斯く言う俺も初めてここに来た時はアリスと同じことを思った。その上、少しがっかりした物だ。


「まあ、外は普通の洞窟と変わらないが中は違うぞ。前にも言ったが、ダンジョンの中は外から見るよりもかなり広くなっていて、草原や森などが広がっているんだ」


「そうでした。どんな光景が広がっているのか楽しみです」


「良し行くか」


 元気を取り戻したアリスを引き連れて、俺はダンジョンの中へと入ろうとする。すると、


「ここは、認められた者しか入ることを許されない場所だ! 子どもは帰れ!」


 ダンジョンの入り口を守護するギルド職員の二人に止められる。


「マイルさん、通行書を見せないと」


「そうだったな」


 アリスに言われた通行書の事を思い出した。懐に手を入れて異空間倉庫を使用し、通行書を取り出す。先ほどのミラーさんの前で異空間倉庫を使った時に失敗から人前でこのスキルを使う際にはこうしようと学んだ。ただこの方法だと、小さい物しか取り出せないのが難点になってくる。なので今後何かを考えないといけないと思う。


 俺は異空間倉庫から取り出し通行書をギルド職員に見せる。すると、


「あなたが一週間前、モンスターの大群そして古龍からこの町を救ってくださった英雄様だったのです」


「大変失礼なことをしてしまいました」


 ギルド職員の二人は俺に向かって頭を下げてくれた。この通行書には俺とアリスの名前が書いてある。それは、冒険者ギルドが対象の冒険者のダンジョンの侵入を許可したと言う証で書かれているのだ。


「いいんですよ。俺も、通行書を出さずに通ろうとしたのですから、止められて仕方がありません。あなた方は、真面目に仕事をしていただけです。ですので頭を上げてください」


「ありがとうございます」


 ギルド職員の二人は礼を言いながら、道を開けてくれた。


「ありがとうございます」


 俺は道を開けてくれたことにお礼を言いながら中へと入って行く。アリスもギルド職員へ頭を下げていた。


 ダンジョンの中に入る瞬間、少し変な違和感を感じた。毎回そうなのだが、これだけはどうやっても慣れない。


 アリスもその違和感を感じて、少し気持ち悪そうな顔をしている。こればかりはどうしようもないんだけどな。


「これがダンジョンの中なのですか!」


 中に入って初めてダンジョンの光景を見たアリスの第一声がそれだった。


 中は一面の草原、端が見えない程広い。その上で、見上げると空がある。しっかり太陽も登っている。


「凄いだろう」


 俺が自慢げに言うと、


「はい! 凄いです! 外からでは想像できませんでした」


「そうだな。確かにダンジョンの中と思えない光景だ。だが、この光景に騙されて油断するなよ」


 俺は、アリスにダンジョンの説明する。


 俺達がやって来ているミトゥールダンジョンは、全十階層有、世界中にある様々なダンジョンの中でも比較的に優しめで、階層も少ない初心者用のダンジョンと言われている。一階層から五階層までは、全面が草原になっており、出てくるモンスターもオオカミ系かスライム系のみである。六階層から九階層までは一面森で少し視界が悪い。出てくるモンスターはゴブリン系のモンスターがメインでたまにオオカミ系もいる。その全てがランクEからCまでだが、階層が下に行けば行くほどモンスターのレベルが上がっていく。そのため、ランクが低いモンスターだからと言って、油断していると命取りになる。


「はい! 気を付けます」


「その意気だ。いつも俺が教えている事をしっかり守っていれば問題ないだろうな。それにレベルもかなり高いしな」


 既にアリスのレベルは百を超えている。このダンジョンくらいなら一人でも突破できるレベルである。ただ、俺はアリスにしっかりとしたダンジョンの攻略経験を積んでもらい為に、じっくりとダンジョンを進もうと思っている。


「だが、レベルだけを感心するなよ。しっかりと技術を学んで、自身の全ての力をいつでも完璧に使えるようになれ」


「はい、マイルさん」


 アリスは親方に作ってもらった杖を手に取る。


「準備万端だな」


「はい、新しい装備を早く試したいです」


「俺もだ」


 俺達は一階層の調査を始める。今回はアリスに危機感を持ってもらいたいため、俺は周囲を探る鑑定を使うが、アリスにはその情報を伝えず、自身でしっかりと周囲を警戒してもらい、どう対処するか学んでもらおうと考えている。


「アリスよく周囲に気を配れ。今回俺は鑑定の魔眼を使わない。だからアリスが周囲を警戒してモンスターを見つけるんだ」


「分かりました」


 もしも、アリスが一人になった時、俺がいないとモンスターを探せないとかになるとかなり危険なため、早めにこういうのに慣れてもらいたいと思ったためである。


 そして、俺の周囲を探る鑑定にモンスターの反応があった。 

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