十五、終了後の一時

 レッドウルフ十体討伐完了。


「お疲れアリス」


「お疲れ様です、マイルさん」


 少し疲れた顔をしている。アリスからしたらかなりギリギリの戦い。アリスの戦闘を百パーセント見たわけではないが、魔法一撃ではどうにもならなかっただろう。体のいたるところに小さな傷がいくつかある。それも自動回復のスキルで少しずつ回復しているし問題はないか。


 なんにしろ、この戦闘はイレギュラーではあったが、アリスをかなり成長させたんではないかと思う。


「マイルさん、少し休憩させてもらってもいいですか?」


「ああ、いいよ。かなり疲れただろうしな」


「はい」


 アリスは近くにある切り株に腰を下ろして一息をつく。そして、


「スゥ~、スゥ~」


 可愛い寝息を立てて寝てしまった。よほど疲れていたんだろう。俺はアリスに鑑定を使って残っている魔力量を見てみる。


「流石に厳しかったか」


 アリスの残り魔力量は残り一割を切っていた。今日一日でのゴブリンとの戦闘、なれない魔力操作のスキル、その上での格上であるレッドウルフとの戦闘。気も張りつめていただろうからな。いつも以上に魔力を使ってしまったんだろう。


「俺も少し休むか」


 アリスが腰を下ろしている切り株に背を預けてもたれかかる。


「周囲の警戒だけ怠らないようにと」


 俺は周囲を探る鑑定で半径五十メートル以内のモンスター全ての反応を探りながら少し体を休めながら、これからの事を考える。


 当分はこのまま低ランクの討伐依頼を受けつつアリスのレベルを上げていく。それがある程度の所まで言ったら、倒せるギリギリのモンスターとの戦闘経験を積んでいく。焦らずにじっくりと確実にレベルアップしていけるように。


 それともう一つ、本気で上のランクのパーティーを目指すのならもう一人はメンバーが欲しいと所でもあるが、そこに関しては後々考えて行けばいいか。


 今後の方針も決まり、俺は立ち上がる。元々そこまで疲弊していなかったこともあり、少し腰を下ろしたことである程度は回復出来た。


 俺は、一人気持ちよさそうに寝ているアリスに、


「よく頑張ったな」


 頭を撫でてやりながら声を掛ける。


 すると、


「マイルさん大好きです~むにゃむにゃ」


 寝言を言っている。


「本当に気持ちよさそうに寝ているな。今日の所はしょうがないが、今後はもう少し体力をつけてもらわないといけないな」


 俺は今後の課題が一つ追加されたなと思う。


 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 あれから一時間が経ち、アリスが目を覚ます。


「おはよ~ございます」


 少し寝ぼけているのか、まだ眠そうだ。


「おはようと言っても、ただ少し休憩していただけだぞ」


 アリスは先ほどまで眠たい目を擦っていたのに、俺の言葉を聞いてハッとなり目を覚ました。


「申し訳ありません。今は依頼の途中なのに寝てしまいました」


「別にいいよ。俺が周囲を探っていたから特に問題はないよ。それにさっきのレッドウルフとの戦闘でかなりの魔力を消費していたようだから、しょうがない。それに今後の課題も分かったしな」


「課題ですか?」


「ああ、体力作りだ」


「体力づくりですか?」


「ああ、体力が増えれば魔力も増える。今後、もっと過酷な戦闘が増えるだろう。その際に今日みたいに魔力切れを起こしたら大変なことになるからな」


「そうですね。私もそう思います。今日の戦闘で私もっと強くなりたいと思いました。マイルさんにただ助けてもらうだけじゃなく、横に並びたてるように」


「そうだね。そうなれるのが一番の理想だね。だけど、そうなろうと思うとかなり大変かもしれないけど大丈夫かい?」


「はい、マイルさんの横に並びたてるようになるためなら私、どんなことでもやれる気がします」


 アリスは凄くやる気満々。これはさっき考えていたプランを変えないといけないな。


 それから俺達は最後の一体のゴブリンを倒して町へと戻る。その際に俺は、アリスのレベルがどれほど上がったのか確認のため鑑定を行った。


 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


 アリス=マーベリック 13歳 エルフ族 LV13


 スキル:風魔法 熟練度4 水魔法 熟練度4 回復魔法 熟練度1 麻痺耐性 熟練度1

     魔力強化 熟練度1 身体強化 熟練度2 魔力操作 熟練度2 

     長寿


 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

 レベルがかなり上がっている。これはレッドウルフとの戦闘のおかげだろう。それに、魔法系のスキルに関しても熟練度が一ずつ上がっている。その上、俺が付与したスキルの中でも一番よく使っていた物に関しては新たなアリスのスキルとして追加されている。


 これはかなりいい発見だ。本来新たなスキルを習得しようと思うと一か月から長くて半年はかかる。だが、このスキル付与を使えばたった一日で習得できるうえに、熟練度までも上げた状態で入手できる。ただ、レアスキルや一度も発動していないスキルに関して入手できないようだ。


 それから今度は自分を鑑定する。


 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


 マイル=マイヤー 15歳 人族 LV19


 スキル:火魔法 熟練度2 風魔法 熟練度1 水魔法 熟練度2 土魔法 熟練度2 

     回復魔法 熟練度1

     剣術 熟練度4 弓術 熟練度2 魔力隠蔽 熟練度2 気配隠蔽 熟練度2 

     身体強化 熟練度5 魔力操作 熟練度3 武器強化 熟練度3 

     属性付与エンチャント 熟練度2 毒耐性 熟練度2 麻痺耐性 熟練度3

     睡眠耐性 熟練度3 自動回復 熟練度3 偽装 熟練度3 消費魔力軽減 熟練度3

     長寿 成長加速 無詠唱 異空間倉庫


 右目:鑑定の魔眼 左目:低下の魔眼


 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


 俺自身のレベルも昨日に比べて六も上がっている。その上で、アリスに付与して使用されていたスキルに関してはどれも熟練度が一以上上がっている。これもかなりの収穫だ。俺自身の成長は仲間にも左右されることにもなるが、かなり成長が見込める。


 使い方さえ間違えなければこれ程強力な物もないだろう。それに、左目。まだ使っていないが、これを使えば俺達が負けることは決してないだろうしな。

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