十四、突然の襲撃
あれからしばらく森の中を探索しているがゴブリンの反応がない。まさかもういない、なって事ないと思うんだけどな。
「どうしたんですか?」
「あれから一時間くらい探しているけど、全然ゴブリンの反応がなくてな」
「そうですね。なんだか少し変な感じがしますね」
アリスの言う通り、先程少し空気感が違う。何がと言われると説明できないが、空気中に漂う魔力量が少し多い気がする。この世界にはどこにでも魔力が存在している。その魔力が空気中に多ければ多い程強い魔物が住み着いているとされている。そのため冒険者ギルドは空気中の魔力量の濃さで森などのモンスターの狩場のランクを決めているのだが、今俺とアリスは感じている魔力量は初心者用の狩場の物ではない。もう一つ上のDクラス以上の冒険者が狩場としている場所に近い魔力量を有している。
だがそのことに気づくとは、流石は魔力に精通していると言われるエルフ族だけはある。
「一度引き返すのもありだと思うが、アリスはどうしたい?」
俺の質問に対してアリスは少し考え込む。
「少し怖いです。でも、マイルさんが傍にいてくれるので大丈夫です」
さっきの戦いで強くなった。そして冒険者らしくなったようにも思う。
「分かった。その代わり俺から絶対に離れないでくれ」
「はい」
アリスは俺の後ろにぴたりとくっ付いてくる。
これでもし何かあっても守れる。
俺は、少し慎重になりながら先へと進んでいく。周囲を探る鑑定も先ほどまで使っていたような物でなく、全力。森全体を探れるようにしている。そして、対象をゴブリンから自分達に敵意を持つ者に変更する。
それと、アリスにスキルを付与しなおしておく。もしものすぐに逃げられるようにだ。
準備は万端、何が起こっても対処できる、そう思った時、周囲を探る鑑定が複数の反応を感知、既に囲まれようとしている。
「まずいな」
今回は対象を自分達に敵意を持つ者としていたために、先ほどまで反応がなかった。
「どうしたのですか?」
「モンスター達が俺達を囲ってる。数は十だ」
「え!」
しかもそのモンスターが何かと思い鑑定を使い調べてみると、
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レッドウルフ オオカミ種 LV5
スキルなし
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Dランクモンスターのレッドウルフ。全身が赤毛に包まれており、口には大きな牙を持っているのが特徴で、一度噛みつかれた二度と放さないと言われている。かなり厄介なモンスターが現れたものだ。オオカミ種は全員がなかなかな俊敏性を持っている。正直なとこ、レベルが一や二差があったところでないような物だと思った方がいい。しかも十体もいる。アリスを守りながらと考えると少ししんどい戦いになるかもしれないが、これを利用することも出来るか。
「アリス、後方支援だけ頼めるか」
「支援ですか?」
「ああ、俺が前に出て近づいてくるレッドウルフを倒して行く。だが数が数だ、数匹取り逃がすこともあるかもしれない。その取り逃がしたのをアリスの魔法で倒してくれ」
「分かりました。」「レッドウルフは格上にはなるが、気負う必要はないから、いつも通り確実にな」
「はい!」
アリスは少し顔をこわばらせてはいるが、気合は十分。それに、さっきの戦闘で自分の身を守る手段も理解しているはずだ。
俺は、腰に下げている剣を抜き構える。それと同時に身体強化のスキルを発動して基礎能力を上げる。そして、武器に武器強化のスキルを使い強度や切れ味を上げる。その上で
準備完了。
「アリス、身体強化は大丈夫か」
「はい、問題ありません!」
「もし切れたときは無理せずに言えよ! すぐに掛けなおすから」
「分かりました!」
お互いに確認しないといけないことも確認出来た。後は、
「ファイアーボール」
俺の全力の魔法で相手の出鼻をくじくだけだ。
俺は周囲を探る鑑定を使いレッドウルフの場所を把握しながら魔法を放つ。その数五。相手の半数を削りにかかる。
「凄い!」
アリスが俺の魔法を見て声を上げる。だが今はその言葉を気にしている暇はない。一人の時はこれくらいの相手余裕だが、後ろに守るべき者がいるとここまで動きを制限されるのかと思う。だが、決して嫌ではない。大切な仲間が出来たのだから。
「マイルさん!」
目の前から迫ってくるレッドウルフを見て叫ぶ。先ほど俺が放った魔法で何体かは倒せたがそれ以外のレッドウルフはこれを合図とばかりに襲い掛かって来た。俺の正面から二体にアリスの方に四体。
「アリスは正面から来る三体に魔法を集中! 左から来ている一体は俺に任せてくれ」
「分かりました」
俺は正面から来ているレッドウルフに対しては土魔法であるモースを発動して、二体の足場を泥沼にして動きを止める。俺はその隙をついてアリスの左側から向かって来ているレッドウルフを真っ二つにして倒す。
それから動きを止めていた二体を確認、まだ泥沼に足を奪われていて動けずにいる。
それなら先にアリスの方へと向かって来ている三体内一体が倒されている。残すは残り二体となっているが既にボロボロで動きもかなり鈍くなっている。
アリスの方に加勢に入る必要もなさそうだ。
俺はそう思い、正面から向かって来ていた二体を切り倒して俺の方の戦闘を終わらせた。
そしてそれと同時にアリスの方もレッドウルフを倒したのだった。
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