ひじきの鬼退治

現貴みふる

昔々あるところに...........

 昔々あるところに。歌のお兄さんと、おかまバーで働く見かけは男だけど中身は女で、しかも腐女子しか愛せないお姉さんが山奥の小さな小屋で暮らしていました。

 

 ある日お兄さんは山へ歌いに、お姉さんはおかまバーに仕事をしに行きました。

お姉さんがおかまバーで働いていると、珍しいことにお客がやってきました。ここは山奥ですから、お客なんて十年に一人来るか来ないかなのです。

 「いらっしゃい。何を飲む?」

 「一番度数が高いものを。」

 「じゃあちょっと待ってて頂戴。」

お姉さんは酒を調合しています。お客が少なすぎるので、熟成させた酒がたくさんあるのです。お姉さんはその中でも一番度数の高い酒を熱し、沸点の違いを利用して、『超成熟された酒から蒸留したアルコール』略して『アルコール』を土焼きのコップに入れて、カウンターへもっていきました。

 「待たせたわね。」

 「おぉ、いいにおいだ。ドイツの秋を思い出すよ。」

 「その話、聞かせて頂戴。」

 「いやぁあれはまだ私が36の時だったかなぁ。あの夏はとても暑くて............


          ☆☆☆


 話始めてから四時間がたちました。お姉さんは三時間五十分寝ていましたが、話し終わったときにぱっと起きて、

 「貴方いい男ね。テイクアウトできないかしら。」

 「ふん。私はさすらいのひじき。求められればどこでも行く。」

 「じゃあテイクアウトで。」

 結局、お姉さんはひじきをお持ち帰りしました。帰ると歌のお兄さんは声をからしていました。お兄さんは一人の時、常に歌っているのでした。その夜はかなり遅かったので、三人で川の字になって寝ました。歌のお兄さん(73)お姉さん(13)

ひじき(52)は一緒に暮らすことになりました。

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