第8話 あっち向いてホイ作戦

「今度の土曜にキスする」


聞いてもいないのに、宮田がキス宣言をしてきた。

同じクラスのサッカー部宮田浩二は、仲の良い友達だ。

日中お互い部活をやっているため、話す時間が休み時間だけでは足りず、よく雅也の家に夜、宮田が話しにやって来る。

宮田は話し好きで、しかも女好き。夜来て話す内容は、全部女の話し、いわゆるコイバナだ。

宮田はマセていて、中学に入って彼女は2人目。すでに1人目の彼女ともキスをしている。だが、それはファーストキスではなく、宮田はなんと小学6年のときに済ませてるそうだ。


今回の宣言は、こないだ2週間前から付き合った2人目の彼女だ。

宮田「まーちゃんはいいな。部活麻衣子と一緒でー」

宮田は雅也のことをまーちゃんと呼ぶ。宮田の2人目の彼女林麻衣子はバスケ部に所属している。

雅也「いや、麻衣子どころか部活中に女子見てる余裕なんてないよ。」

宮田「とか言ってー、見ないわけないでしょー?」

雅也心の中「見るわけないしー、宮田と違うよー」

ホントに宮田は常に女のことばかり考えているヤツだった。

部活を決めるときも、雅也はバスケ部と決めていたが、あまりにも宮田が、「ぜーったいサッカー部の方がモテるってー!」と言って

説得するもんだから、危くサッカー部にしようかと少しフラついたのだった。

クラス、学年の女の子の情報や、モテる方法など、めっちゃ詳しかった。


今夜も、宮田はキス宣言から始まり、ちょっとエッチな話しまで、女の子の気持ちから体のことまで永遠に話し続けた。

雅也「なぁ宮田、付き合って2週間でキスって早いんじゃないの?」

とたぶん宮田には通じないと思いつつ訊いてみると、案の定

宮田「早い訳ないじゃん!むしろ遅いくらいだよー」 雅也 やっぱり笑

雅也「え、宮田、キスまでどうやってもってくの?」

と雅也はこれは参考にしようと、訊いてみる。

宮田「由美子のときは、あっち向いてホイ作戦で成功した。」由美子は中学1人目の彼女

雅也「あっち向いてホイ作戦!?何それ?」

宮田「まーちゃん、女の子っていうのは、本気とふざけてるの、どっち?と思わせるくらいが、落とせるんだよ。まーちゃんはわかんないかなぁ。」


あっち向いてホイ作戦とはこうだ。

「あっち向いてホイやろう」と言って、最初はあっち向いてホイと右やら上とかを指して普通にあっち向いてホイをやる。そしてちょっとほぐれて笑いが出る頃になったら、「こっち向いてオレ」と言ってこっちを向かす。その瞬間にチュッとする。

すると、彼女は、「バカっ」とか言うけど、ギュっと抱きついてくるそうだ。


雅也「えー!?それ怒らないのー?そんなうまくいく?」


宮田「だって実際これでしたもん。そういうもんだよ女って。まーちゃん」

雅也「えー!」

雅也は、ファーストキスの仕方について、根本的に覆されたようだった。


雅也はちょっと美佐とあっち向いてホイ作戦をしているところを想像する。。。

「あっち向いてホイ」


「こっち向いてオレ」

「いやー、無理だー」


宮田「今度の作戦も決めている。次のデートの土曜日に麻衣子と映画を観に行く。午後からだから、終わってフラフラして、帰ってくる頃は夜になる。麻衣子の家の近くの三丁目公園に行ってベンチに座る。予定では麻衣子はオレの肩に頭を乗せ少し疲れて眠くなってくる。

そこで!「眠い?眠気覚ましてあげようか?」と言って、顔を上げた瞬間にチュっだ!


雅也「えー!?」

雅也はこれも無いだろうと思った。


宮田「まっ、結果報告しにくるよ。楽しみにしてて。」


雅也はべつに他人がキスをしたか、しないかなんて楽しみにしないよ。と思ったが、その方法"眠気覚ましてあげるよ作戦"が、本当にうまくいくかどうかは興味があった。


宮田「ところでまーちゃんは美佐ちゃんとしたの?」

雅也「えっ?何が?」

宮田「何が?ってキスに決まってるじゃん」

雅也「いや、×○△□※」したともしてないともない返信をして下を向いた。

宮田「えー!?まさかまだしてないのー?」

  「それは、美佐ちゃん可愛そうだよー」

雅也「えっ??」

宮田「だってお前たち、もう2ヶ月くらい付き合ってるよねぇ?」

雅也「いや、まだ、1ヶ月ちょっとだよ。」

宮田「でも、もうそろそろじゃない?」

雅也「んー、、」

宮田「美佐ちゃんきっと待ってるぞ。」

雅也「うそー?だってオレ達まだ12歳だし、美佐もまだそんなこと考えてないでしょう?」

宮田「いやいや、オレ6年のときファーストキスしたじゃん?そんときの子に聞いたんだけど、女の子の方がませてるって。そういうこと、早くから考えてるんだってよ。女の子からは言えないから待ってるんだってよ。」

雅也「そういうこと?早くから?」

宮田「そう。だからオレはそれを聞いてから、待たせないようにしてるのさ。」


雅也は宮田の話しを、本当のことなのか?嘘なのか?

頭の中で、白挙げて、赤挙げてのように、「本当」と「嘘」の旗を挙げたり下げたりしていた。





美佐を待たしている??

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