第6話 恋

「••••!?」

「え??」

雅也は一瞬思考停止になった。


「私達、、付き合ってるよね?」

美佐は、今度は少しはっきりと、ゆっくり言った。


何でそう言うんだろう?美佐は何か納得いかないことがあるのだろうか?

嫌われることしてしまったか?

クラスの女の子と話しすぎか??

など、頭の中をビデオを早送りするように理由を探すのだが、言われている理由がわからない。

雅也「何で?」


美佐「ううん」


雅也「オレ何か悪いことした?」


美佐「ううん•••」


雅也「???」


美佐「雅也くんあんまり誘ってくれないから。・・ごめん」



そうか、そういうことか。付き合ってから、ちょっと道端で話したりするくらいで、一回もデートと呼ばれるようなことしてないし、彼氏彼女のようなことはぜんぜんしていない。それを美佐は寂しがっているのか??雅也はこれまでの付き合い方を考えた。


雅也「いや、ごめん。オレの方こそごめん。」


ん?でも、美佐はオレともっと会いたいということか??美佐に遠慮して、迷惑になっちゃいけないと思っていたが、もっと会いたいということか?二人でどこか出かけたいとか思ってくれているのか??

美佐を大事に思うことが、勝手にあまり会わない方が長持ちするようなふうに考えていたのは事実だ。オレも会いたい、毎日一緒にいたいと思ってるよ!けど、なんでだろ??美味しいケーキをまだ食べないで取っておくじゃないけど、美佐との恋はゆっくりゆっくり進めたいんだ。想っていないわけじゃない。むしろ大好きだから気軽に会ったりしないんだ。。

でも美佐に対してもしかして寂しい思いをさせているのであれば、寂しがっているとしたらダメだ。ごめん、美佐。そんな風に美佐が思っていたなど考えていなかった。これでは彼氏失格だ。

ダメだなぁオレ。自分のことばっかりしか考えていなかった。


「ごめん」

雅也は自分の考え方が悪かったのと、美佐の気持ちに感謝するようにに謝った。


美佐「ううん••ごめんね、雅也くん」


雅也「いや、美佐は悪くないよ。」


雅也「付き合ってるに決まってるじゃん!ごめん、美佐にそう思えないと考えさせてしまっていたなら、オレが悪い」


雅也は続けて話す

「これからは、もっと色々楽しく付き合って行こうか?」


美佐「うん!」


雅也「ごめんねオレ、ぜんぜんわからなくて」

美佐の気持ちがわからなくて。とデートの仕方がわからなくて。を合わせたように言った。


美佐「ううん、私こそごめんね、変なこと言って」



その後は、打ち解けたように、色々話した。

いつもは今日の出来事の話しをした後にすぐ沈黙になってしまうが、先の話し、未来の話しをしたり、愚痴を言ったりなど、二人とも、いつもより裸で話せた。

そう、付き合ってるなら楽しくなくては。相手を楽しませなくては。ということがわかってきた。

美佐の同じクラスの希と健太郎が付き合ってて、いつも休み時間に一緒にいるらしく、帰りも一緒に帰ってるらしい。の話しを美佐がして、なんだか嬉しかった。

「そうか、美佐もそういうのしたい」と羨ましかったみたいだ。

「なんだー、そういうことかー」

雅也はすっかり美佐の今日の問いがわかった。

もうちょっと積極的に行かないといかんなと同時に、美佐のそんな気持ちを持っていたことに、美佐も女なんだなとドッキリだった。




雅也は"恋"というかたちのないものが、胸のなかで優しく、マッチで火をつけたように、ゆっくりと燃え出すような気持ちになっていた。

初めて、これが"恋"というものかと。

すつかり風呂上がりから時間が経ち寒い台所で長電話をしていていたので湯冷め状態だったが、胸の中、心の中は暖かくなっていた。


「もう11時よー!」

母ちゃんの、二人を遮る現実に戻すような叫びが聞こえたので、

明日、部活終わったら一緒に帰る約束をして、電話を切った。


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