第3話 彼女

そうこうしてるうちに、中学生になった。

小学生のときに、父がいなくなって、なんとなく、小学生だとお父さんがいなくなって可哀想と、友達も友達の親、先生も、そういう風に思ってくれてるんだろうなぁというのが、なんとなく感じた。

当の本人は、正直、それほど落ち込んではいなかったが、まわりはすごい出来事が起きた!というように、大丈夫?みたいに、いたわりの声を多くいただいた。

それが、中学生になると、反対にそれが、箔がつくといった感じか、ちょっと不良っぽいがカッコ良くまわりはとらえていたようで、当時確かに陰があったオレを、いい方に思ってくれる人が多かった。親が一人いない、非日常のようなドラマの世界に住んでいる人みたいな見方をされていた。そんなんで、非日常の世界の陰がある男を興味を持ってくれる人がいてくれて、男も女もたくさんの友達ができた。

中に物好きな女の子もいて、手紙をもらったりした。そして、オレと似ても似つかない、反対の幸せの日常で過ごしているような、陰も勿論なく、すごくキュートで、清純な、銀河鉄道999に出てきそうな、少しファンタジックな女の子にラブレターをもらい、ふたつ返事でOKして、お付き合いすることになった。

彼女は実は小学校も一緒で、存在を知っていたが、クラスも同じになったことはなく、趣味やクラブなどもかぶることがなかったので、接することはなかった。

ただ、実は、すごく素敵な人だなと思ったことがあり、覚えていた。というのは、きゃっきゃっ言って騒ぎ回る子が多い小学校のプールの授業で、いつも見学していたのだった。

オレもプールが苦手でよくサボっていたのだが、反対側の女子の日除けの屋根の下で、くつろぐ美少女のような雰囲気を醸し出していたのが彼女だった。

ラブレターには「小学校の頃から好きでした」と書いてあった。

もしかして、オレがプールサイドで気にしてたとき、相手も気にしてくれていたのかなと思ったら嬉しかった。


オレなんかで良いのかなぁという思いと、好きになってくれてるという初めてな告白が物凄く嬉しくて、クールを装っていたが、正直自分では、父もいなくなって、家は貧乏だし、性格暗いしと卑屈になっていたのだ。

友達は多かったが、いわゆる不良と呼ばれている人、勉強の成績が悪い人、ただただ幼稚な人、などだったので、プールサイドの美少女からの告白は、本当嬉しく、オレみたいな人を見てくれてたんだなぁと、自信にもなった。


というわけで、生まれて初めて彼女ができたのだった。

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