蒼井ミハエル ~吸血鬼から見た人間という生き物~ 巻の二
『痛みや恐怖を和らげてくれる労わりや慈しみが存在する事実を知ること』が大事なはずなんだけどな。そちらには目を向けずに痛みや恐怖の効能だけを語るのは危険だと、どうして理解しようとしないの?
『痛みや恐怖を和らげてくれる労わりや慈しみが存在する事実を知ること』が大事なはずなんだけどな。そちらには目を向けずに痛みや恐怖の効能だけを語るのは危険だと、どうして理解しようとしないの?
「う~! カニクリームコロッケ、美味し~♡」
僕と
それなのに、自分から進んで家族の笑顔を奪おうとするのがいるというのが僕は悲しい。
エンディミオンの父親の場合は、『家族から笑顔を奪う』どころじゃなかったけど。そもそもエンディミオンの父親にとっては自分以外はすべて<実験動物>でしかなかったらしい。自身の血を分けた実子であるエンディミオンのことさえ。
<我が子を愛せない親>
というのは、人間にも吸血鬼にも確かにいる。それに、『我が子を愛せない』というだけなら必ずしもそこに<責任>は生じないと思う。本人だって好きで、<子供を愛せない親>になったわけじゃないだろうから。
けれど、『愛せない』からって壊していいわけじゃないんだよ。苦しめていいわけじゃないんだよ。だって、
『見ず知らずの赤の他人を傷付けたり苦しめたりしていいわけじゃない』
から。見ず知らずの赤の他人を『愛せない』のは本当に普通のことだけれど、だからって傷付けたり苦しめたりしていいわけじゃないよね? それと同じだよ。自分の子供を愛せないからって傷付けたり苦しめたりしていいわけじゃないだけなんだ。
あと、人間はよく、
『痛みや恐怖を知ることで成長する』
的なことを言うけど、それが根本的に正しくない事例は世界中に転がっているよ?
<テロが多発する地域>
<犯罪が頻発する地域>
の人間達は痛みや恐怖がとても身近だけど、成長しているの? 成長しているならテロや犯罪に対処する方策もたくさん思い付きそうだけどね。
でも、実際はそうじゃない。
だから正しくは、
『痛みや恐怖を知ることで、痛みや恐怖がいかに人間を壊し正常な判断力を奪うかを知る』
だけなんだよ。
『痛みや恐怖で他者を屈服させ従属させるのが可能であることを知る』
だけなんだ。
テロリストや粗暴系の累犯はそれをよく知っているから利用するんだよ。これを<成長>と言っていいの?
大事なのは痛みや恐怖じゃない。
『痛みや恐怖を和らげてくれる労わりや慈しみが存在する事実を知ること』
が大事なはずなんだけどな。そちらには目を向けずに痛みや恐怖の効能だけを語るのは危険だと、どうして理解しようとしないの? 自分が痛みや恐怖で他者を支配したいから?
でもそれは、自分にも返ってくるんだよ? だけどそうやって自分に返ってきた時には被害者ぶるよね?
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