黒猫現る 少しの夢を見させる おばあさん編

すんのはじめ


前書き

 春のやわらかな日差しの中、年老いた女性が海の近い公園のベンチで休んでいた。

 高浜和子、82才。身体は丈夫だが、最近、少し脚が弱ってきている。そのせいか、気持ちが弱ってきている。

 海辺の旅館の女将だったが、数年前に息子夫婦に任せて、自分はたまに厨房を手伝う程度で、もう引退していた。




 何処からか黒猫が現れた。赤いリボンを首に巻いている。

 

 持っていた袋からパンを取り出してちぎって、猫に


「お腹すいているか、ほれっ食べな」と手のひらにのせて差し出した。


すると黒猫は


「お前が大切にしている想い出をもう一度見させてやる」としゃべった。

 

「忘れられない想い出はあるか?」と続けた

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