83、乙女心を忘れない28歳
トシゾウの調教を始めて数日が経過していた。
「サトシ、あんた何考えてるの?」
「いや、別に何も‥‥‥」
アリスさんに女神像の部屋に呼び出された俺。
直立である。
トシゾウとイレイザは魔法陣の部屋。
「アイツになんか吹き込んだ?」
「‥‥‥俺は頼まれただけです」
怒ってらっしゃる。
「何を?」
「アリスさんを嫁に欲しいから、見合った男になるにはどうすればいいのかって‥‥‥」
「で、何? ダイエットさせてるの?」
「‥‥‥はい」
「私がアイツと結婚すると思う?」
「‥‥‥わかりません」
「結婚して欲しいの?」
「それは俺がどうこう言うことじゃないでしょ‥‥‥。ただトシゾウさん頑張ってるし、陰ながら応援してるだけです」
「そう」
「‥‥‥怒ってます?」
「別に」
「トシゾウさん、最近目がキラキラしてきてますよ」
「‥‥‥先に言っておくけど、私は誰とも結婚する気はないからね!」
やっぱり怒ってらっしゃる?
「ずっと?」
「ずっと!」
まあ、トシゾウさんがフラれるのはなんとなく分かっていた事だ。
しかしだ、無理だからって何もしないより、頑張って足掻いてからフラれた方がトシゾウさんにとって良いと俺は思う。
「まだまだトシゾウさんは頑張るんで、その時がきたらちゃんと伝えてあげてください」
「‥‥‥分かったよ。私はご飯作るから、邪魔だからもう帰って良いよ!」
帰れと言われても、別に魔法陣の部屋が俺の家ではないのだが‥‥‥。
「ニア殿! 腕立てが3回、腹筋が1回出来たでござる!」
「凄いじゃないですかトシゾウさん」
「次は5回を目指すでござる! うおおおお〜っ!」
少しずつではあるが、トシゾウは成長していた。
体型にさほど変わりはない。
が、目付きが違う。
「ダーリン、コイツ腹筋1回でめちゃくちゃ喜んでるね」
吹き出しそうになりながら、ピンピンのイレイザ。
「イレイザ、頑張ってる人にそういうこと言わないの」
「‥‥‥いつも思うのだが、お主失礼でござるぞ? アリス殿とニア殿に免じてお主のような下等な魔族とも一緒におるのだ、わきまえよ」
「‥‥‥うるさい豚ね」
氷のような冷たい目をするイレイザ。
ただの色欲に見えるが、腐っても魔王軍の四天王。
「拙者を愚弄するでござるか! 許さんぞ!」
睨み合う2人。
「はいはい、ストップ! 今のはイレイザが悪い、ちゃんと謝って」
「えええ?! ダーリン‥‥‥」
尻尾を垂らすイレイザ。
「でゅははははっ! さあ平伏すでござる!」
勝ち誇り胸を張るトシゾウ。
「あ、トシゾウさんも、謝るんですよ」
「な! どうしてでござる?!」
「また下等とか言いましたね? 駄目ですね?」
「ぐぬぬぬぬっ!」
「はい、2人とも謝ってね」
「「ごめんなさい」でござる」
そんななんでもない日々は暫く続く。
俺の元に女神様の啓示が来たのは、トシゾウが腹筋と腕立てを10回クリアー出来るようになった頃だった。
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