35、縁を切る



「‥‥‥そんなことが」


 いつになく真剣なバルカンさん。


「魔王の事や、これからの事を知ってる限り詳しく教えて下さい」


 レイラと俺はポキ村での事を報告をするため、城に戻っていた。

 本来の依頼ではグレートボアの討伐。

 それが村には、四天王を名乗るボルディアがいて、村の人も全員死んだ。

 

 依頼を出して勇者が死なないように、少しずつ強くする。

 確かそう言っていた筈。

 恐らく今回の件はイレギュラーなんだろう。

 四天王の登場が予定外なら、当初は絶対に魔族が来ない事も分かってたってことだろ?

 でもそうなると、そもそも依頼とは何なんだ。

 ゲーム的な都合と言えばそれまでだが、依頼の流れは誰が決めた?

 そのへんを全て聞くつもり。


 そして、なんで予定外の事が起こったのかも知りたい。

 これは何となく予想はつくが──


 魔王が本気で襲ってくるなら、こっちもダラダラしてられない。


「ニア殿、ワシには答えられん。王と話してもらえますかな?」


「良いですよ」





「よく来たな勇者レイラと魔法使いニアよ」


 王との謁見。

 

「王様、知ってる事を全部教えて下さい。後、魔王は本気で攻撃してきてます。悠長な事を言ってないで『勇者の剣』などの必要アイテムを全て提供して下さい」


「それは困る」


「何を困る事があるんですか! 人が殺されてるんですよ!」


 立ち上がって大きな声を出した。

 ちょっとイライラしてます。


「‥‥‥すまん。決まりが」


「その決まりは誰がきめたんですか?!」


 王様は黙ってしまった。


「話す気がないなら、俺はこの国とは縁を切ります」


 縁を切るって何?


「それは困る!」


 あ、効いた。

 王様に焦りが見えた。


「ニア様が縁を切るなら、私も切ります!」


 レイラも続く。

 だから縁を切るって何?


「‥‥‥其方らは女神様と連絡を取れるのか?」


「居る場所は知ってます」


 レイラが引きこもっていた名も無き村で、ぷらぷら遊んでる筈。


「そうか、ならば女神様に聞いてくれるか」


「お役所お得意のたらい回しですか?!」


 どこの世界も本当に。


「‥‥‥ヤクショ? ちょっとわからんが、依頼の内容、アイテムを手に入れる時期など全て女神様からの啓示で言われておるのだ。そして口止めもされておるのだが‥‥‥」


 あの女神からの指示なのか。

 確か、全知全能とか言ってたな。


 しかしなんか引っかかる。

 女神様はなんでもっと色々教えてくれなかったんだ?

 その方が魔王も倒しやすいだろ。

 ‥‥‥あの女神抜けてるからな。


「わかりました、女神様に聞いてみます」


「うむ、余から聞いたのは内密に頼むぞ!」


 胸を張る王様。


「‥‥‥王様、多分もうバレてると思いますよ。あの人、全知全能って言ってました」


「なんと!」


 驚き慄く王様。


「謝れば大丈夫ですよ。‥‥‥多分」


「‥‥‥なんか上手いこと、頼むぞニア殿!」


「なんとなくやってみます」


「本当に頼むぞニア殿!」



 王様の声を背中に聞きながら、俺たちは部屋を出た。

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