32、ゲームバランスは大事
「変ですね」
ポキ村には人が誰もいなかった。
「変だね」
依頼の内容は村の畑を荒らす、猪のようなモンスター『グレートボア』の討伐だった。
「‥‥‥遅かった?」
グレートボアとは戦った事がある。危害を加えなければ、自分から襲ってくるようなモンスターではない。
それに村人が誰も居ないというのは妙だ。
「静かですね」
レイラは少し怯えてるようだ。
「確かに不気味。もう少し村を捜索してみようか」
「はい!」
わかった事。
人はやはり誰も居ない。
──結構やばいかもしれない。
家の中に勝手に侵入する『勇者行動』を開始した俺たち。
見つけたのは荒らされた部屋や血痕。
数件の家にお邪魔したのだが、それぞれ同じような状況。
‥‥‥ホラーゲームでしたっけ?
「やばいでしょ、ゲーム変わっちゃってるよ」
「ニア様、怖いです」
大丈夫、俺も結構びびってます。
「村人、無事だといいんだけど」
やはり助けに来るのが遅すぎたのか?
依頼はズルをしてかなり早く進めているのだ、遅いということはないと思うんだけど。
「ニア様、一度城に戻ってバルカンさんに報告しませんか?」
レイラは青い顔。
「そうだな、これは俺たちだけじゃ事が大き過ぎるかも──」
言葉を止めたのは、急に視界に火の弾が飛び込んできたからだ。
真っ直ぐ俺とレイラに向かってくる。
──まずい。
「ニア様!」
「いててて、また熱いな」
レイラを庇うため前に出たので、もろに喰らった。
まず今のレイラには耐えれないダメージ。
「フン、やっぱりこれくらいじゃ死なないんだね」
家の影からゆらりと現れたのは、大きな鎌を持ち黒いローブを着た男。
魔族であろう。
額に1本の角が生えていた。
「君がニア君で、そっちの女は勇者かな。一緒にいるとは好都合」
「お前は魔族か?」
「見たらわかるでしょ?魔王軍四天王の一人ボルディアです、以後お見知り置きを。まあここで二人とも死んで貰うから、忘れてもらって大丈夫だけど」
ニヤニヤと笑うボルディアと名乗る魔族。
「四天王? そんな奴が何でここにいる?」
「ニア君を殺しに。君、ヴィラルと互角だったんだって? 魔王様がかなり御立腹でね、僕が派遣されたんだ」
「こんな簡単な依頼で、四天王とか出て来るんじゃねえ。ゲームバランスがめちゃくちゃだ」
「何を言ってるかわかんないけど、ニア君は勇者でもないのにかなり強いらしいね」
ヴィラルと戦ったのがまずかった。
敵に存在がバレてます。
「ここで君を殺せば、僕が魔王軍ナンバーワンだ。ヴィラルの鼻も明かせるってもんだ」
どこにでもある覇権争い。
「君にはここで死んでもらう。あ、そこの女勇者もついでにね」
わざわざ勇者でもない俺を殺しに来たのか。
光栄で御座います。
「村の人は何処にいる?」
「邪魔だから殺したよ」
「なに?!」
「君が来るのを待ってたんだけど、暇だから遊んであげてたんだ。でもギャーギャー泣いてうるさくてさ、別に人質にもならなさそうだし全員殺した」
──殺した?
死んだのか?
俺のせいで死んだのか?
「おっと怒ってる? 怖い顔になってるよ」
「‥‥‥自分に怒ってんだ」
俺は声が震えるのを抑えられなかった。
──俺は魔王を舐め過ぎていた。
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