15、俺はプリング街のサトシ
「あんたなんかしたの?」
ベッドでゴロゴロする俺に、突然部屋に入ってきたアリスさんが話しかけてきた。
「急に何です?」
「‥‥‥あふん」
入り口の方を振り向くと同時にアリスさんは膝から崩れ落ち、よろけながらかろうじてベッドに転がりこむ。
もちろん部屋にいる時はノーマスクです。
「あれ程ノックして下さいと──」
アリスさんを見ると、赤い顔のまま俺の胸辺りに顔をすりすりしていた。
「‥‥‥わざとやってますね」
「これは事故よ」
「で、何があったんです?」
「あ、そうだった。今日の昼間あんたが居ない時、王宮から使いが来てあんたにこれを」
アリスさんはポケットから手紙を取り出した。
「必ず読む様に伝えろって」
貰った手紙を読んでみる。
「‥‥‥何これ? 城に来いだって」
「あんた何したの?」
手紙を覗き込むアリスさん。
2人共まだベッドに転がったままです。
「アリスさん、なんかもう色々近い」
「‥‥‥これも事故だね」
「このぬいぐるみマニアめ、まだ使ってない『魔王の元気』を一気飲みしてやろうか」
「‥‥‥あんたそうだったね」
悲しそうな顔をするアリスさん。
何かまた勘違いされたようだ。
俺は、いつもどこまでも元気いっぱいです。
「王宮ってどこにあるんですか?」
「街から北に伸びる街道を、1日くらい歩けば着くそうだよ。私は行ったことないんだ」
「結構近いんですね。これ行かなかったらどうなりますか?」
「打首だね」
首が飛びますか。
「冗談だよ。でも行った方が良いと思うよ、悪い話じゃなさそうだったし」
「やだな〜」
ベッドにゴロンと大の字になり苦い顔をした。
「ねえ、付いてってあげようか!」
上から俺の顔を覗き込むアリスさん。
「大丈夫です、危ないし1人で行きます。あともう本当に近いです。やばいです」
「あんたどうせ役に立たないんだから‥‥‥あれ?」
俺は役に立つんです。
「起きましょう」
「‥‥‥そうね」
いそいそとベッドから起き上がる俺とアリスさんでした。
「これが城か」
西洋風の城。
RPGの城だ。
なんか感動した。
城の周りにはプリング程大きくはないが街もあり、宿屋なども目についた。
急いで歩いたら3時間程で着いたので、泊まる必要はなし。
用事を済ませてとっとと帰ります。
「たのもぉ〜!」
入り方がわからないので、とりあえず入り口で叫んでみた。
「なんだ! どうした?!」
慌てて入り口にいた門兵が駆け寄ってくる。
「来てやったぞ」
「お前誰だ!」
槍を突きつけられました。
これはもう追い返されたってことでいいかな?
「呼ばれて来たけど、攻撃を受けて城に入れなかったから帰ります! ご機嫌よう」
そのまま帰ろうとすると、後ろから不意に腕を掴まれた。
「其方、何故手紙を見せんのだ!」
こいつ見覚えがあるぞ、いつぞやのヒゲのおじさん。
「槍を突きつけられて怖かったので、それどころではありませんでした」
「‥‥‥棒読みで話すな。来てくれたのだなニア殿。その節はお世話になった」
頭を下げるヒゲのおじさん。
嫌な予感はしてたんだ、姫とか呼んでたもんな。
「では、これにて!」
「帰らんでくれ。王がニア殿をお待ちだ」
「俺はニアではない」
「ほぉ、あの街で其方の風貌などを聞いてまわったら、すぐに皆がニアだと教えてくれたぞ」
プリングの街に住みにくくなるのはごめんだ。
なんか偽名ないかな‥‥‥。
「俺はサトシ」
「サトシ殿というのか、さあ中へ!」
とっさに本名を言ってしまった。
偽名が本名で、本名が偽名というアベコベになりました。
もうどっちでも良いや!
大きな城の門が音をたてて開いた。
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