10、そしてイケメンへ



 転移してからひと月が過ぎていた。


「‥‥‥ニア、あんた最近やばいね」


 もはや我が家になりつつある宿屋。

 帰ってきて早々、受付のアリスさんに呼び止められた。


「どの辺りがですか?」


「‥‥‥おもに顔」


 失敬な女アリス。


「ちゃんと毎朝洗ってます。ぬいぐるみを抱きしめないと寝れないくせに生意気ですよ」


「‥‥‥相変わらず失礼ね。あと、私は一応褒めてるんだけど?」


「そうなの?」


「あんた、カッコ良いわ」


 急な告白ですね。


「アリスさん、俺に惚れると火傷するぜ」


「‥‥‥ちょっと何言ってるかわからない。そんな事より、なにかした? 急にカッコ良くなり過ぎでしょ」


「それこそ何言ってるかわかんない」


 俺は毎日汗だくで石を投げ、経験値と金を稼いでるだけです。

 金持ちオーラでも出てるかな?


「見てみなよ」


 アリスさんはポケットから女性の嗜み、手鏡を出した。

 そういえば、この世界はあまり鏡がないから最近見てないな。

 金持ちになってオーラが溢れ出る顔でも見てみるか。


「‥‥‥あなたは誰?」


「あんたでしょ」


 鏡を見て驚愕。

 美しい。

 確かに俺なのだが、全てのパーツが美しい。


「‥‥‥やってないよ」


 整形的な意味で。


「何を?」


 キョトンとするアリスさん。

 流石にこっちの世界に整形はないか。

 まあ、大体なんでこうなったか予想はつく。

 ステータスの魅力だろう。

 レベルを上げると美しくなる理由が全くわかんないけど。


「ね、やばいでしょ?」


「‥‥‥やばいですね」


 自分で言うのもなんだが、神々しささえ感じてしまった。


「女の子達があんたを見に宿に来るのよね」


「そういえば、女子にやたら話しかけられます」


 人生初のモテ期です。


「あと噂なんだけど、街の外で美少年が大きな岩を持って暴れてるらしい‥‥‥あんたじゃないよね?」


「俺です」


「‥‥‥あんた何やってんの?」


「石を投げるだけの簡単なお仕事です」


「‥‥‥なにそれ」


 女子にモテるのは大変嬉しいが、目立つのは困る。レベル上げがやりにくい。


「何か顔を隠せるアイテムないですか?」


「せっかくカッコ良いのに顔隠すのかい?」


 今日からは顔を晒さずに生きよう。





【ニア】

レベル42

力121

素早さ112

身の守り108

かしこさ134

魅力129

HP218

MP134


 

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