6、魔王の元気




「他に行きたい場所ある?」


「道具とかアイテムを売ってる店はあります?」

 

「雑貨屋ね、こっちよ」


 アリスさんに連れられてきたのは、ファンシーで可愛らしい雑貨屋さん。

 ピンクが主体のラブリーな店。


「アリスさんはキツそうなのに、こんな可愛いお店が好きなのですね」


「‥‥‥怒るわよ。あんたが来たいって言うから連れてきたんでしょ、私はあまり来ない」


 中に入ると女性の可愛い店員さんが、小走りにやって来る。

 

「あ、アリスさん。注文して貰ってた『ラブリーうさちゃん、強く抱きしめて』なんですけど──」


「今日は言わないで!」


 強く抱きしめているのですね。


「‥‥‥うるさい!」


「何も言ってません」


「顔がうるさい! 早く商品を見なさい」



 一見ファンシーなアイテムしか売ってなさそうな外見の店だが、色々な物が売られているようだ。


「薬草とかはありますか? HPを回復するような」


「‥‥‥HPて何ですか?」

 

 キョトンとしている店員さん。


「ステータスを開くと見えるあれです」


「‥‥‥ステータス? 開く?」


 おかしい通じない。


「この子ちょっと記憶が混迷してるんだ」


「‥‥‥あ、なるほど!」


 なるほどじゃない。

 ステータスを開けば見えるHPを知らないとか‥‥‥なんか色々おかしいな。

 

「じゃあ体力を回復する道具ありますか?」


「体力の回復。‥‥‥あ! そういう感じなんですね。ちょっと待って下さい」


 可愛い店員さんは店の奥から数本の怪しげなビンを持って来てくれた。

 雰囲気は回復薬っぽい。


「がんばって下さいね」


 カウンターに置かれたビンのラベルを読んでみる。


 『オトコの源』『魔王の元気』『鬼になれ』『炎のパワー再び』etc。

 凄く元気が出そうです。


「いや、こういうんじゃなくてですね‥‥‥」


 よし、理解した。

 この世界には蘇生や回復がない。

 そしてステータスも何故か一般には知られてない。

 こんなところかな?


「やっぱり、これ下さい」


 回復するか試しに『魔王の元気』を購入しておこう。


「‥‥‥あんた、そうなんだ」


 いよいよ俺を見るアリスさんの目が可哀想を通り越した向こう側に行ってしまいそうだった。




 

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