第3話 会合

 魔女の国・中央広場。

 その隅で魔女ガルネッタは1人、静かに腰を下ろしていた。


(もう……どうしてあの子たちはいつも……)

 心の中でそう呟きながら呆れた表情を浮かべていると、そんな彼女の元へと

静かに近寄る存在があった。


 気配に気が付いたガルネッタが視線を向けた先には、中性的な顔立ちをした

魔女が彼女の姿を見下ろしていた。

「あ、ジェデト……」


 気力のない声を発するガルネッタに対し、ジェデトは凛とした態度で彼女へと

問い掛ける。

「随分と悩んでいるようだが、またあの姉妹のことかい?」

「あたしをここまで悩ませるなんて、あの子たち以外いないでしょう……」


 そう言いながら額を手で押さえるガルネッタ。

 そんな様子の彼女を見て、ジェデトは変わらず冷静な声で話を始める。


「しかしあの姉妹、魔女の務めは果たしている」

「そ、それはそうだけど……」


「……彼女たちが心配なのか」

「別に心配なんかしてない! ただあの子たちの愚行で、また争いにでもなったら

この国だって大変なことになるわ! そうなってからでは遅いの!」


 ガルネッタが動揺した態度で大きな声を出すと、ジェデトは落ち着いた表情で

彼女をなだめる。

「君の言い分は分かった、我々に彼女たちを止める権利はないが、君の言いたい

ことを伝える方法ならある」

「あたしの言いたいことって……何をするの?」


 落ち着きを取り戻したガルネッタが問い掛けると、ジェデトは何処か苦い表情を

浮かべながら静かに答える。

「彼女たちに分からせてやればいい」

「分からせてやればって……そんな……何もそこまで……」


 青ざめた表情で言葉を詰まらせるガルネッタに、ジェデトは苦笑しながら

言葉を返す。

「君が何を想像しているのかは知らないが、別に手荒なことはしない」

「……いや、精神的には少し手荒かもしれないが、悪いようにはしないから

僕に任せてくれ」


 その言葉を聞いて、顔を引きつらせたまま話を聞いていたガルネッタは

我に返ったように口を開く。

「え? 任せて大丈夫なの?」

「ああ、ちょうど僕も彼女たちに用があったところだ」


「君は物陰からでも聞いているといい」


 ……。

 翌日、義姉妹は魔女の国を軽快な足取りで歩いていた。


 しかしその姿は、昨日彼女たちが散策していた街とは文明の違いを思わせる

こちら側の住人に相応しい奇異な衣服を纏っていた。


 魔女と人間、2つの文明に合わせて己の身なりを使い分ける。

 これがこの世界を歓楽する彼女たちのすべであった。


 「ジェデトが急に呼び出すなんて……何だろう?」

 「何か起きたのかもしれないね」


 2人が普段の様子と変わらない会話をしながら進んでいると、やがてジェデトの

待つ書庫の前へと辿り着いた。

 マリーチルがその扉を開けると、すぐにアズリッテも彼女に合わせて中へと

入る。

 すると奥から、2人のよく知る人物の声が聞こえてきた。


「突然呼び出して済まなかったね、待っていたよ」

 2人が声のする方へ視線を向けると、そこには爽やかな表情で義姉妹を迎える

ジェデトの姿があった。

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