第2話 帰還

 街での散策を終え、魔女の国へと帰還した義姉妹たち。

 その2人の両手には、先ほど彼女たちが街で調達した菓子箱が握られている。


 そんな彼女たちを出迎える1人の魔女の姿があった。

 しかしその表情は穏やかなものではなく、険しい顔つきで2人の姿を

見据えていた。


「ガルネッタ、待っていてくれたの?」

「……」

 明るい態度で声を掛けるも、無言のまま表情を変えないガルネッタに

マリーチルは様子を伺うように問い掛ける。


「あれ? もしかしなくても……怒ってる?」

「当たり前でしょう!」

 ガルネッタが鋭い口調で答えると、今度はアズリッテが続くように

彼女へと問い掛ける。


「出て行く前に私たちの仕事は終わらせましたが、何か不手際でも?」

「え? じゃあ私たち何かやっちゃった?」

 揃って疑問の表情を浮かべる義姉妹に、ガルネッタは怒りの声をあげる。


「ええ! それ以上に大変なことをしましたよ貴女たちは!」

 その声を聞いた2人が目を丸くすると、ガルネッタは呆れた表情で言葉を続ける。


「貴女たちがいま出歩いていた街は、特に魔女への風当りが強かった場所なの!」

「うん知ってる、アズリーから聞いたよ」

 間の抜けた声でマリーチルが答えると、ガルネッタはその視線をアズリッテ

へと向けた。


「やはり貴女は知っていたのね?」

「……はい」

 気まずそうに答えるアズリッテを見て、マリーチルがなだめるように

ガルネッタへと口を挟む。


「心配させたのは悪かったよ、ごめんね」

 そう言ってマリーチルは、手に持っていた菓子箱をガルネッタへと差し出すも

彼女はそれに目もくれず、なおも2人に鋭い言葉を投げ掛ける。

「たとえ貴女たちが叩かれても、焼かれても……変な事されてもあたしは決して

助けませんからね!」


「それは分かってるよ」

「何があっても、この国を巻き込む真似はしません」

 2人はそれぞれ言葉を述べると、住処の方角へと歩き出した。


「あ! 待ちなさい!」

「……?」

 突然ガルネッタの呼び止める声に2人が振り向くと、マリーチルの手に持つ菓子箱を指差しながらガルネッタは照れくさそうに口を開く。


「その……それ……いらないとは一言も言ってないけど……」


 ……。

 その後、住居へと戻り着替えを済ませた義姉妹たちは、ガルネッタの言葉を

思い出す。


「確かに私たちの行動は、見方によって魔女への裏切り行為と取れるのかも

しれないね……」

「裏切りって……ちょっと!? 私そんなつもりはないよ!?」

「私だって同じだよ、でも今回は少し軽率だったなぁ……ごめん」


「でもそれで怖がっていたら、あっちの世界なんて見れないよ」

「そう……だよね……」

 マリーチルの言葉に頭を抱えるアズリッテ。

 そんな彼女を見て、マリーチルは普段の明るい態度へと切り替える。


「ひとまずあれ食べようよ、せっかくその危険を冒して買ってきたんだから」

 そう言いながらマリーチルはテーブルに置かれた菓子箱を指差すと、アズリッテは静かに答える。


「……うん、食べようか」

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