第23話 猪突猛進猪突猛進猪突猛進!


「よし着いた。この道を進めばヨシュアくんの言っていた縦穴はすぐそこだよ」


 俺は地図を取り出して、もう一度現在地を確認した。

 ヨシュアくんが見たという遺跡の入り口、地面に開いた縦穴は山道の途中にあった。

 地震の影響で地面にポッカリと穴が開き、坑道の床をぶち抜いてさらに下の階層まで続いていたという。


「まずは偵察だ。荷物は置いていこう」


 俺たちは移動の邪魔になる食料を木陰に隠したあと、必要最低限の装備を身につけて縦穴へ向かうことにした。

 隊列を入れ替えて俺が先頭に。ダイアナを間に挟んで、ヨシュアくんが最後尾へ回る。

 今回のパーティーには罠感知や索敵を行う斥候スカウトがいないので、身軽な俺が斥候役を務めることになった。

 そのはずだったんだけど……。


「シズさん。あそこッスよ。遺跡はあの岩場の向こうっス」


「こらこら。ヨシュアくん。隊列を崩さないの」


 最後尾にいたはずのヨシュアくんが、いつの間にか俺の隣にいた。

 鼻息荒く前方の岩場を指差す。

 ヨシュアくんを後ろに下がらせた後、岩場の様子を確認。

 岩場のすぐ近くに小さな人影が見えた。


「誰かいる。二人とも身を低くしろ。できるだけ音を立てないように」


 俺は小声で二人に指示を出して、木陰に身を隠しながら前方の様子を窺う。

 人影の数は三つ。武器を携えた緑色の小鬼――ゴブリンが立っていた。


「弓兵が1匹、ショートソード持ちの剣士が2匹……? おかしいな。オレが前に見たときよりも敵の数が少ないッスよ」


 ヨシュアくんが首をひねっていると、ダイアナが岩場の奥を指差した。


「奥により強い魔物の気配を感じるわ。岩場の陰にゴブリンシャーマンが隠れてるみたい」


「そいつが親玉ってことか」


 ゴブリンは知性の高い悪鬼デビル族のモンスターだ。

 人間の小児並みの知性と知識を持ち、罠を仕掛けたり、鉄製の武器を巧みに扱う。

 中でもゴブリンシャーマンは、土と金の精霊術を使う厄介なモンスターだ。

 一匹一匹の戦闘力は大したことはないが、巧みな連携で相手を翻弄してくるので油断ならない。


「縦穴の位置はわかるかな?」


「岩の向こう側……ちょうどゴブリンシャーマンが立ってる辺りッスね」


「入り口を守ってるのかしら?」


「だとしたら妙じゃないか? ヨシュアくんは遺跡の中でゴブリンと遭遇したんだろ? シャーマンがボスなら一番安全な遺跡の中に潜んでいるはずだ。入り口の見張りなんて部下にやらせればいい」


 中に入れない理由がある。

 もしくは、より強力な存在が遺跡の奥に潜んでいるかのどちらかだろう。


「……嫌な予感がする。村に戻ろう」


「またいつもの?」


「俺の悪い予感は当たるからな」


 もうすぐ日が落ちる。入り口の場所は確認した。

 今後のことはギルドとも相談すべきだろう。

 俺はそう提案しようとして――



「うおおおぉぉぉっ! 一番槍は貰ったぁぁぁっ!」



 鉄の槍を手にしたヨシュアくんが、ゴブリン目がけて突撃を仕掛けた!

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