神造人間として世界を救ったので、ご褒美に幼妻と結婚しました。邪魔するヤツはワンパンで倒す! ~仮面の勇者アガート~

空下元

第0話 プロローグバトル -変身-


 ズゴオォォォォォォン――――ッ!



 山あいに広がる鬱蒼うっそうとした森林に、轟音が鳴り響く。

 爆音にも似た地鳴りとともに大地が激しく揺れ、土煙が噴き上がる。

 地面に開いた大きな亀裂から、その巨体は現れた。



「GRUAAAAaaaaaaaaッ!!!!」



 があげた雷鳴のような雄叫びにより、周囲を覆っていた土煙が晴れ空気が震える。


 地下から姿を現したのは、山のような巨体を誇るトカゲ型のモンスターだった。

 表面は苔緑色の肉厚な鱗で覆われており、前足には骨太で巨大なかぎ爪。

 何より特徴的だったのは、前頭部に生えた螺旋状にねじ曲がった一角だ。

 王立図書館の文献で読んだことがある。

 あのモンスターの名前は……。


「あの特徴的な一角……間違いない。アースドラゴンよ!」


 金髪ツインテールなの少女は両手で白樺の杖を握り締め、モンスターの名前を言い当てた。

 その名を聞いて、隣で鉄槍を構えていた年若い短髪の戦士が目を大きく見開く。


「あーすどりゃごんっ!? そそそそそれって伝説級のモンスターじゃないっスか!?」



「GRuRuRuRu………」



 悲鳴が耳障りだったのか、アースドラゴンは鼻を鳴らして自身のシンボルである巨大な一角を少年と少女に向けてきた。

 俺は二人を下がらせて、アースドラゴン相手に拳を構える。


「ヨシュアくんは村に戻って、住民に避難を呼びかけるんだ」


 ドラゴン系のモンスターは、大規模な自然災害を起こす厄災の元凶として御伽話おとぎばなしで語り継がれるほどだ。

 まともにやり合えばタダでは済まないだろう。


「シズさんはどうするんスか!?」


 槍使いフェンサーの少年――ヨシュアくんは子犬のような甲高い声をあげて俺に問いかける。


「ここでアイツを食い止める。村に近づかれたら壊滅的な被害が出るからね」


 巨大な一角を用いた突進攻撃チャージは一撃で城壁を破壊するほどの威力だ。

 そんな攻撃をまともに喰らったら、村はひとたまりもないだろう。


「無茶ですよ。シズさんが残るならオレも……!」


「もう一度言うよ。ヨシュアくん、キミが村を護れ」


「……っ!」


「ここは俺に任せて先に行けってね。運がよければまた会えるさ」


「シズさん……」


「後は任せたぞダイアナ。おまえなら飛翔の術ワールウィンドでひとっ飛びだ」


「わかった。くれぐれも無茶はしないでね」



「GUGAAAAAAAAAA――――ッ!!!!」



 アースドラゴンが雄叫びをあげる。

 俺は左腕のガントレットを構えて二人に叫んだ。


「走れっ!」


「必ず助けを連れて戻ってくるッスから!」


風妖精シルフよ。我らを彼の地へ運びたまえ。飛翔ワールウィンド!」


 精霊術士エレメンタラーの少女ダイアナが飛翔の術ワールウィンドを唱えると、二人の身体が宙に浮いた。

 風妖精シルフが生み出したつむじ風に運ばれて、二人の背中があっという間に遠ざかる。


「待たせたな。これで遠慮なく戦えるってもんだ」


 俺は剥き出しの右手のひらで、鉄手甲ガントレットを装備した左の拳を受け止める。

 それを挑発と取ったのか、アースドラゴンはカビ臭い鼻息を荒々しく噴き出した。



「GUGAAAAAAAAAA――――ッ!!!!」



 鼓膜を破るような爆音を叫びながら、アースドラゴンが突進攻撃チャージを仕掛けてきた。

 強固なかぎ爪で周囲の岩を蹴散らし、巨大な体躯に物を言わせて木々をなぎ倒す。


 ちっぽけな人間である俺と山のようにバカでかいアースドラゴン。

 彼我ひがの差はあきらかだ。

 爪先に触れただけでも致命傷は避けられないだろう。

 だが、尻尾を巻いて逃げるわけにはいかない!


「愛する嫁さんが俺の帰りを待ってるんでねっ!」


 心頭滅却。呼吸を整え、丹田に”気”を集中。

 左手を天に掲げ、召喚呪文コマンドワードを叫ぶ!



「セットアップ! 神衣展開サモン・アガートラム……ッ!」



 召喚呪文に応じて左腕のガントレット――神器アガートラムに秘められた力が解放される。


 次の瞬間、俺の体が銀色の光に包まれた。

 周囲を照らす目映い銀光。



 リィン――――



 清らかな鈴の音が鳴り響く。

 光が収まり、音が鳴り止むとそこには――



「変身――――完了ッ!」



 白銀色のフルフェイスアーマーに身を包んだ俺――の姿があった。




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