ネトラジ! 殺し屋ランキング!
λμ
殺し屋ランキング制定会議~!
燭台に火が灯され、部屋がぼうっと明るくなった。
重厚な長机にスタンドマイクと水差し、グラスが等間隔に並んでいた。厳しい音とともに扉が開き、一癖も二癖もありそうな人々が次々と入ってきた。
最も敬意を払われている様子の、黒スーツに深い赤のシャツを着た老人が最奥に腰掛け、その隣に、胸元の大きく開いたドレスの女が座る。
中央の、レバー式カフの置かれた席には日に焼けた筋骨隆々の男が。隣ひとつ間を開けて別の男が――そうして、席がおおよそ埋まったところで、室内に陽気なジングルが流れ始めた。
中央の男がレバーを押し上げ、『オンエアー』の文字列が点灯する。
「世界の殺し屋! はちまれぇ!」
かかるエコー。男が続ける。
「はい! 今年もやってきました殺し屋ランキング制定会議! というわけでね、今回はなんと、ネットラジオ放送! ワタクシ〈お喋り〉ジョニーが代表して喋っております! いやー、もう年の瀬ですよ、年の瀬。年末は変な依頼が増えて困るもんですが、今年はいっぱい殺しましたか? シケた商売ばっかりしていませんか? ダメですよ? 安いとランキング伸びませんよ? 殺しをするならスマートに! もらうお金もガッポガポ! 大事ですよー、この辺」
ジョニーの話に、会議の面々が苦笑する。
「それよりジョニー。私達の紹介はしなくていいの?」
「ああ! そうでした、そうでした! 今回は初のラジオ放送ということで、この際だから会議の面々も覚えてもらおうと――あ! そこの殺し屋さん! 今、俺のランキングが上がらねえから殺っちまうかと考えましたね!? 甘く見てると返り討ちですよ!? 気をつけるように――ってまた脱線しちゃいましたよ。いや来てみたら用意されてたブランデーが美味しくて美味しくて。舌がもう回るのなんの。早速メンバーをご紹介したいところなんですが、なんと! 今日は! いや今年は!? 特別ゲストをお招きしております! どうぞー!」
ガコン、と扉が開き、若い男が席についた。
ジョニーが言う。
「登場は入室から! お名前よろしくおねがいします!」
「あ、あー……入ってます? これ。あ、入ってる」
んん、と男が咳払いした。
「はじめまして、去年、引退しました、アイク〈ホブ〉メロウです」
「出ました。凛々しいお声。どうですか。前年度まで三年連続一位の〈ホブ〉メロウですよ、あーた。ブラッドバスクリスマスの〈ホブ〉メロウ! 私はもう色々聞きたくて聞きたくて――」
今年は長い会議になりそうだった。
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