第3話 また、結婚式の招待状が!・・・ん?

結局綾華ちゃんに誘われたけど、二次会は行かなかった。なんとなく、綾華ちゃんが酔い潰れてしまう気配があったから。


アパートに帰って、スーツから寝巻きに着替える。18時だけど、もう外には出ないし楽な格好が一番だ。


ふと、さっきポストに入っていた郵便物を見た。


白い型紙の封筒に、『結婚します』と書いてある。


「またまた、結婚式の招待状かな?」


今度は誰だろう?事前に連絡も無いから思い当たる人はいない。だけど、大学のサークル仲間とかなら住所を知ってるから勝手に送りつけてきている可能性がある。


裏面を見ても、送り主が書いていない。なんという不手際だろう。これじゃあ、一目見ただけでは招待状とわからず、イタズラだと思われてしまうかもしれない。


「誰だ?誰からだ?」


封筒を開ける。留口がラメ入りの赤いハートのシールだ。非常に子供っぽい。


中から取り出したのは、またも子供っぽい便箋。


ピンクの可愛いクマのキャラが散りばめられている、ちょっと幼そうなやつだ。


全部で4枚?入っている。


え・・・?


『小学六年生になりました。工藤美兎です。あなたはわたしと結婚する運命になります。今、奥さんも彼女もいないなら、わたしがおじさんをもらっちゃうよ?♡』


ーーーえーっと。なんだこの手紙は。


とりあえず悪戯だってことはわかった。


ここは破り捨ててーーーん?



『ついしーん。美兎のこと忘れてるおじさんのためにい・ち・お・う!書いとくね。美兎はおじさんにプールで一度助けてもらってるの。お礼をしたいから、絶対電話するよーに!念のため、住所も書いておきます!待ってるよー♡』


1枚目はここで終わっている。そして、2枚目には電話番号と、住所が書かれていた。


いや、意外と家から近い場所だ。


そして、今やっと思い出した。美兎って大学の時のバイトで溺れかけていたあの子か。確か5歳だった気がする。今は6年経ってるから11歳。小学5年生かよ。


お礼がしたい、か。だったらうちの店に食べに来てくれないかな。


俺は酒に酔っていたかもしれない。だから、思考がうまく働かないのかもしれない。


この手紙が、あの子からのものだという確証はない。っつーか。住所知ってるなら、直接来いよって話だし。


だが、ふわふわした何かが、俺の大切なタガを外す。


「手紙か。うん、悪くない」


3、4枚目は返信用封筒と便箋だった。文通しろというのだろうか。


『ごはん、食べに来てください。うちの店は美味しい焼肉店です』


営業みたいになってしまうが、会うなら保護者も一緒がいいだろう。


届くかどうかわからない封筒を手に取ると、俺は寝巻きのまま外に出て、ポストに投函していたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る