第3話 稼働停止
結婚と共に賃貸の一軒家に夫と暮らしはじめた。結婚すると、すぐに子宝に恵まれて、臆病なナマケモノも、なんとか大変な妊婦生活を乗り越え、37歳で無事出産。産んでみると、まぁなんと愛おしいんでしょう。可愛くて可愛くて、この子のためには頑張らないとと、脱ナマケモノの兆しとも思える感情が現れた。かに思われたが…。
子供はそもそも嫌いではなかったけど、自分の子供がこんなに可愛いとは知らなかった。毎日、頭にかぶりつきたいほどかわいい。この子には、ずっと幸せだと思ってもらいたい!とはいえ、年季の入ったナマケモノ根性。あぁ、この子とずっとゴロゴロしながら遊んでいたい…との思いに駆られる。子供の体調、食事の管理や成長の観察、日々の世話は面倒がらずに一生懸命できるのです。でも、仕事に行くのは相変わらずキライ。大人だからキライではすまないのだけど、家に居たいのです。
しかし夫の仕事はなかなか芽が出ず、生活が困窮。イヤイヤながらわたしの仕事を増やすことに。愛しい子供を夫に預けて仕事に出る日々。それでも出勤時間はなんとか最低限に抑えようとするナマケモノ。
家を建てることなんて微塵も考えられない状況でした。
新たな仕事に挑戦中の夫は、芽が出ずの状態からなかなか脱せず、温室育ちのナマケモノは、未だかつてない通帳残高を見て不安感が最大レベルに膨張。子どもの世話と仕事と不安とで、ついに私の頭がポンッとプチ爆発。
そこで夫がチャレンジを一旦諦め定職につくことになった。しかし、給料的にはなかなか厳しい状況はつづき、不安はMAXを超えて大爆発。プスンプスンプスン…ナマケモノついに稼動停止。当時の詳細をあまり思い出せないが、仕事のストレスを解消もできず、家計も苦しく、先が不安で、頭が真っ白になった感じだった気がする。仕事もやめ、夫を賃貸住宅に残し、子供と共に実家に数ヶ月世話になり子供の世話だけに専念した。幼い娘はすぐに、父の膝の上にちょこんと座り、わたしよりも先に実家での生活に馴染んでいる。不安を脇に置き、穏やかな日々をこなすことで、なんとか僅かずつ稼働再開する。 平静を取り戻すと同時にこのままではいけないとの思いが強まり、再び夫のいる賃貸の我が家に戻った。
そんな矢先、海外にいた大家さんが予定より早めに帰国するため急に家を明け渡すこととなった。大家さんも強制的にあけてくださいではなくて、契約期間内は、自分達がどこか借りて住んでもよいしと言ってくれたのだけど、自分の家があるのに住めないなんて可哀想と、夫とも意見が合ったので、できるだけ早く明け渡すことにした。急だったので、不動産屋さんも必死で新たな家を探してくれて、家賃もできるだけ今より上がらないよう交渉してくれて、新たな賃貸の一軒家へと引っ越すことに。
子育て中に一度一軒家に暮らすとアパートには抵抗があり、また一軒家を希望したのもあり家賃も微増。
夫は薄給ながら真面目に働き、わたしは子どもの可愛さをエサになんとか動く日々を送り40歳を迎える。そんなこんなしているので、貯蓄などできるはずもなく、暮らしていくだけで、お金はどんどん消えていくのでした。
一軒家にいくつか暮してみたことは、家を建てるのに、かなり役立った。どんなに頭でシミュレーションしても、実際に住んでみないとわからないことはたくさんある。
賃貸の一軒家の一軒目と二軒目は、結構違いがあって、その違いで、自分達の好みや適した間取りや機能など、色んなことを知ることができた。
一軒目の家は、広くて部屋数も多く、窓が大きくて、一面がガラスの壁もあるような造りで、ただ収納は少なめ、家の築年数もまあまあ長い。
広いのはとっても気持ちいいけど、3人家族で暮らすには少し不便。結局、日常的に使うのは6部屋あるうちの2部屋という生活になった。収納がすくなかったので1部屋は洋服部屋となり、1部屋は来客用、残りの2部屋は使っていない状態となった。大きな窓もガラスの壁も、雰囲気はいいんだけど、家自体が古いため窓も窓周りも断熱性が低い。わたしの住む地域は冬はかなり寒い地域で、冬になると寒すぎて、ガラスいらない…と思うのでした。広いと掃除も大変。
二軒目の家は、一軒目よりもだいぶコンパクトだが築年数は半分くらいだった。部屋数は5部屋ありひとつひとつはコンパクトで、住んですぐに思ったのは、とにかく壁やドアがじゃまだった。資材や造りが少し新しいので断熱性は前よりよかったけど、それでも冬は寒い思いをした。5部屋中、1部屋はクローゼットになり、1部屋は洗濯物専用のサンルームとなり、あとの3部屋を寝室、リビング、ダイニングとして使っていた。床面積が狭くても、部屋が細かく仕切られると掃除はやはり大変だとわかった。
ここでの生活から、次のような我が家の好みが見えてきた。
そんなに広くなくていい。
壁やドアは極力少なくていい。
ウォークインクローゼットは必須。
サンルームか乾燥機が必須。
大きな窓はそんなにいらない。
子どもの保育園入園を機に、ナマケモノは仕方なくまた仕事にでることになった。それでもパートで短時間にし、愛しい子供との時間を大切に過ごしていた。
そんな最中、なんと、夫が仕事中に怪我をして両足骨折したのだった。
幸い入院とはならない程度で、両脚とも膝より下の部分の骨折だったので、両脚ギプスながら家の中は這って動ける状態だった。とはいえ、仕事はしばらく休むことに。労災だったので、無収入にはならなかったが、流石のナマケモノもアドレナリンを出して頑張るのです。夫と子供の世話と仕事。骨折ですから数ヶ月で復活すると思い頑張ったのです。
「家を建てる」から、どんどん遠のいているような…。
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