エピソード2-7 エドガー先生のギャタピー講座
「そもそも魔獣って言うのは、元々、自然発生した生き物ではないんすよ。
この国の人間が、人工的に魔法を使えるシステムを作ろうとして出来た、副産物なんす。
根本的な話になるっすけど、魔法って言うのは精霊と契約してはじめて使えるようになる力っす。
なもんで、異世界転生者である人間以外、精霊が見えずコミニュケーションがとれないんで、精霊と契約ができず、この世界の住人は魔法が使えなかったんすよ」
そこへジュドーが得意気に割り込んだ。
「その話なら知ってるぜ。
精霊の気まぐれで、異世界転生者の子孫も辛うじて魔法は使えるが、それでも出力としては異世界転生者の方が上になる。
それを解消すべく、魔獣と獣人が誕生したんだよな?」
「そうっす。
精霊の魔力を宝石に込めて魔石にし、それを体内に取り込ませることで人工的に魔法が使える人間を作れるんじゃないかって事で、昔大々的にこの国で実験が行われてたんす。
しかし、そのまま人間の体内に魔石を埋め込むと体が耐えられなかったんで、体を丈夫にさせるべく遺伝子操作をして身体強化しなければいけなかった。そうして作られたのが魔獣や獣人なんす。
なので、魔獣や獣人の祖先は人工的に遺伝子操作されて作られた生き物になるっすよ。
ギャタピーは
なんで、安心して食べてもらっていいっすよ」
そう言ってにっこり笑う、エドガー。
ジュドーが青い顔をしてエドガーに聞いた。
「ほんっとうに大丈夫なんだな?」
「オーリンとは似て非なる
「信じるからな、ほんっとうに信じるからな……!」
言いながら、水をごくごく飲むジュドー。
それを聞いたルクソニアが、むくれながらジュドーに言った。
「もう、大丈夫よ。大袈裟ね!
わたしも何回も食べているけれど、何も起こってないのよ。
ただの美味しい白身魚なんだから!」
ふんすと鼻息荒く言うルクソニアに、ジュドーは眉をハの字にした。
「子供が食べても安全なんっすから、そんなにびびらなくても平気っすよ、ジュドー様。
ヨドさんも冷めない内にどうぞ」
ジュドーはジトーッとエドガーを物言いたげに見つめていたが、観念して口を開いた。
「そこまで言うなら信じるけどよ、何であえて魔獣なんて危険な生き物を、子供に食べさせようと思ったんだ?
何かあってからだと遅いぞ」
エドガーはにかっと笑ってこう返した。
「『食べれる魔獣で一攫千金!
おいでよ、始まりの森!』ってキャッチフレーズでこの森の集客をしようと思いまして。ね、旦那様♪」
エドガーがリーゼンベルクに話を振ると、ニヤリと笑ってジュドーにこう返した。
「まぁなァ。
金はいくらあっても困らねぇし、目新しいモンぶら下げて客寄せするのも、ありっちゃあアリだろう?」
ジュドーが言った。
「なしっちゃあなしです!
誰かが最初に毒味する必要があるでしょう。
事故って毒の部分を食べさせてしまったらどうするつもりだったんですか」
「うちのメイド長が回復魔法の使い手なんで、もし事故って毒が回っても大丈夫っすよ!
アフターケアもバッチリっす!」
親指をたてるエドガーに、ジュドーはため息をついた。
「事故ること前提の研究かよ……。
さすがは血濡れのエドガー、倫理観がおかしい……!」
その時エドガーは、ヨドに水を次いでいたアンと目があった。
(真相を知られるのは面倒くさいことになりかねないし、アンさん。
くれぐれも魔力アップの人体実験だって事、内緒にしててくださいよ……!)と、目で訴えるエドガー。
アンはゆっくりまばたきを一回した。
真意が伝わったと言うサインを受け、少しほっとした表情を見せるエドガー。
リーゼンベルクがそれをめざとく見つけ、クックッと笑いながら言った。
「ずいぶん仲良くなってるじゃねぇか」
「なんの話っすか?」
エドガーは内心ひやひやしながらも、リーゼンベルクに聞いた。
「さぁ、なんの話かねェ」
ギャタピーを口に運ぶ、リーゼンベルク。
主の許可なくトップシークレットな話を独断で開示したことがバレたらと思うと、エドガーは生きた心地がしなかった。
一方泣きぼくろが印象的なメイドは、涼しい顔をして業務をこなしている。
踏んできた場数が違うのだと言わんばかりの堂々たる態度だ。事情を知っている分、内心エドガーは舌を巻いた。
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