33「絶望的な目覚め」

※グロ注意です。


   💭   🔁   ❤×????




 眩しくて、目が覚めた。


「ん……ぅ……」


 起き上がる。ここは実家の前。僕は何故か、実家の玄関に倒れていたらしい。

 何故? ここで寝入る前、一体何が――


「――――あッ!?」


 思い出した!

『呪い』の正体が星狩さんで、僕は星狩さんから逃げようとしているうちに、ここに行きついたんだった。それで、でも、星狩さんに追いつかれて――


 ふと、背後に気配を感じた。

 振り向くと――


「――ヒッ!?」


 星狩さんが立っていた。彼女はスマホを操作して、


『ヒッ、って何。ヒッ、って』


 という文を僕に見せてくる。

 その表情はいつもの彼女のように、穏やかだ。昨夜感じたあの禍々しさが無い。それに気づけば、あの赤黒いオーラも纏っていない。まるで今まで通りのような――

 いや、そんな事よりも!!


「じゅ、余命!! 僕の余命は!?」


 ポケットをまさぐる。よかった! スマホはちゃんとある!

 震える指でスマホを立ち上げ、Twittooを開く。

 果たして――






『🔁 + ❤ = ????』






 スマホに新しいヒビが入っていて、余命が分からない!


「あぁ、あぁぁ……」


『ひどいなぁ、私の事を無視するなんて』


 視界に星狩さんのスマホが差し込まれた。


「え?」


 顔を上げると、星狩さんが恥ずかしそうな顔でスマホに文字を打ち込んでから、


『ね、生まれて初めてのキスの味、どうだった?』


「~~~~ッ!!」


 思い、出した。僕は昨夜、星狩さんに、き、き、キキキキスされたんだ!!


「きゅ、急に何だってあんな事――」


 味!? 味って何だよ!? そもそも僕には視力以外の霊感は無い。星狩さんの唇の感触なんて、感じられるわけがない。

 ……いや? 昨日の夜、気絶する前に、わずかに感触を覚えたんじゃなかっただろうか? でも、それも気が動転して勘違いしただけだろう、と思う。


『さぁ、どうしてだろう?』


「ああいうのは、好きな人に対してやるもんやろ!?」


『物部くんは私の事、好きじゃないの?』


「は、はぁっ!?」


『私の事好きだから、いっぱいいっぱい守ってくれてたんじゃないの?』


「いやっ、その! それは――そもそも君は!!」


 言い淀んで、星狩さんの顔を直視できなくなり、手癖でスマホをいじる。手が勝手に、ここ数日でルーチンと化した作業を始める――つまり、2年4組のアカウント巡りを、だ。

 良かった。みんなまだ生きて――――……


「うっ――…」






『サブカル男子組』の一人、【撮り鉄】寄道よりみちくんのアカウントに――――……1分間動画が、上がって、いた。






 震える指で、動画を再生する。


『はぁ……はぁ……いいね……いいねを集めないと……』


 寄道くんと思しき声がする。わずかな喧噪、チチチ、という雀の声。映っているのは、


「駅のホーム……三ノ宮駅?」


 寄道くんは撮り鉄だ。大方、関西でしか見られない車両を撮ってUPして、いいねに変えようとしていたんだろう……そう、『いた』んだろう。

 1分間動画がUPされているというのは、そういう事だ。


『き、来た!! 225系統だ!!』


 寄道くんの声とともに、身を乗り出すようにして線路に近づく映像。寄道くんがスマホで撮影しているのだろうか。


 ファーーーーーンッ!!


『お客様! 危ないですので黄色い線の内側までお下がりください!!』


 激しいクラクションの音と、駅員さんの慌てた声。

 そして、


『あ…れ……?』


 駅のホームに入って来る電車が、






 ファーーーーーーーーーーーーーーーンッ!!


































 ギギギギギャイーーーンギャリギャリギャリンッ!!


 ドカシッゴボッグガガガガガガボガボ!!


 ガココココココバキバキバキャキャキャ!!


 ガコッガコッガコッガコッグゴゴゴゴゴ!!



 グモッチュイーーンボゴゴゴゴゴッ!!
















 ――――ィィィイイイキキキキキキキキキッ!!


 急停車した車両と、その前に転がる寄道くんの体が、動画に映し出されている。

 跳ね飛ばされたはずのスマホが、姿


『君、大丈夫――』駅員さんが飛び降りて来て――、『うっ』


 ――言葉を、失った。

 それはそうだろう。


『た、たすけ…く……だ…………』


 寄道くんが、ずりずりと匍匐前進をするかのようにして、駅員さんの方へ進もうとする。


『ヒッ……』


 けれど逆に、駅員さんは後退あとずさる。


『たす……ごぼッ』


 大量の血を吐く寄道くん。

 駅員さんは駆け寄るでもなく、立ちすくんでいる。

 駅のあちこちから悲鳴が上がる。






 それは、そうだろう。









































 


 動画はそこで終わっている。

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