自爆特攻!? パンジャンドラムちゃん!
ちょこふ
プロローグ
人間、生きている中で理不尽な出来事に会わない奴はいない。
生きてる中で、何も悪い事をしてないのに怒られたり、少々夜に動いていただけで近くの兵士に補導されたり、酔っ払いに絡まれて怪我をしたり……。
この世の中は様々な理不尽に溢れているのだ。
そして今まさに、そんな理不尽な出来事の一つが、現在俺の身に降り掛かっているのだ。
「お前にはそろそろギルドを辞めてもらう事になる」
そう鋭い目線と共に、ギルド長が俺に告げてきた。明らかにお高そうな椅子にどっしりと構え、腕を組み威圧してくる。
全くもって理不尽だ。何もしてないのにも関わらず、ギルド長はこの優秀な俺を辞めさせようとしている。
全く、酷い話もあったものだ。
「ギルド長、なんで俺が辞めさせられるんですか。納得いきません」
「なんだ、思い当たる節が無いのか?」
ため息混じりな息を吐く、ギルド長。
「俺は今までたくさんのクエストをこなし、このギルドに多くの貢献をもたらしてきました。それなのに!」
下手すれば、このギルドで一番クエストをこなしたかもしれない。それに、強い魔物などもたくさん倒してきた。それなのに、何故なんだ……。
「はぁ…………」
ため息を吐きつつ、おもむろに立ち上がり、窓の外を見つめるギルド長。
そうすれば雰囲気が出るとでも思っているのだろうか。
「まあ、なんだ。おまえは確かに今まで活躍してくれた。少しめんどくさいクエスト程、進んでこなしたりな 」
「はい、そうですね」
めんどくさいクエストの方が、時間はかかるものの報酬が高いからだ。いや、高いというのは少し語弊がある。基本的に、冒険者はパーティを組むのだが、報酬は山分け。その為、モンスター討伐などの高額なクエストを受けたがる。だからこそ、ソロからすれば高いと思えるクエストも、そこまで良くないのだ。
「俺はな、お前の事を一応高く評価しているんだ。これでもな」
一応というところにツッコみたいが、取り合えず黙っておこう。
「お前は特殊だ。それこそ、万能な力であり、この世界で数少ない特殊体質……。だからこそ、一人はギルドに欲しいと思っていたんだがな」
「もう、もったいぶらずになんで俺が危険通告されているか、言ってくださいよ」
再び、ギルド長はため息をつくと。まじめな顔で、向き直る。
「本当に分からないんだよな?」
「はい、全くこれっぽちも」
「分かった、それなら私の口から言おう。それは……」
固唾を呑み込み、その言葉を待つ。何が原因なのか、まったくもって分からない。
「それは、お前の数々の問題行動のせいだ!」
「は?」
思わず、声が出てしまった。問題行動なんて、今まで一切起こしたことがないこの俺がどうしてそんなことで……。
「まさか、誰かに噓の報告を……」
「それだったら、よかったんだがな。というか、本当に馬鹿なのか? 今までの行動を振り返れば分からないなんて事はありえないだろ」
「振り返ったら? うーん、そうですね……。そういえば、この間酔っ払いに絡まれて軽く反撃しましたね」
「そうだな、確かに間違ってない。だが、軽く反撃と言ったが、半殺しにするのを軽くとは言わないぞ! あと、先に絡んだのはお前だという報告があがっているんだが!?」
「いやだって、ソロでクエストをしていることに対しボッチと言われてイラっと来たからですよ」
それが、女だろうが子供だろうがボコボコにしてやる。
詰まるところ、俺は悪くない。
「でな、他に上がっているものだとな……。例えば、女湯の覗き一回、営業妨害が二回。後は、広場の銅像を爆破したようだな。門番に喧嘩を売ったこともあり、後はカジノで散財し魔法を使おうとして連行されたと。で、これのどこが何もしてないだ。よくそんな事を言えたな、お前……。というか、今まで何度か勧告もしたし、なんなら呼び出しもした。なぜ今まで来なかったんだ」
「いいクエストがあったんで……。まあ、今日にいたっては、ギルド長に俺がクエストを受けられないようにされたから、仕方なく来たわけで」
「お前……、本当に何もしてないってよく言えたな」
ギルド長は更に深いため息を吐き、椅子へと座り込む。なんだ、そんなに大変な事でもあったのか?
そんな事を考えていると、扉の方からコンコンという音が聞こえてきた。
「私です、入ってもよろしいですか?」
「おお、君か入っていいぞ」
扉を開けて入ってきたのは、煌びやかな装備品に、目元を隠すマスクを身につけた女。この街に住んでいたら誰でも知っているような有名人、勇者の末裔のタスラナだった。
水色の髪の毛に凛とした表情。戦うのには、確実に邪魔な大きな風船のような胸を持つ。
めんどくせぇ奴が入ってきたもんだ。
そんな、タスラナは俺の姿を確認すると、ゴミを見るような目で呟く。
「ふーん、ルドラ。居たのか」
「なんだ。居て悪いのか? 俺はこいつに呼ばれてきたんだよ。なんか文句あるのか?」
「別に、そういわけじゃない」
「ああ、そうかよ」
「そんな事より、この間の暴行なんだったんだ。問題行動は起こすなと、前々から忠告してたはずだが?」
会う度にこのような小言を言ってくるので正直俺はこいつの事が苦手だ。
「そういや、そんな事もあったな」
「そんな事って……、君のせいでどれだけの人が迷惑としてると思っているんだ。自覚しろ」
ギルド長と同じような事を言ってきやがる。まあ、正直どうでもいいが。
「まあ、兎にも角にも。もし次に、問題を起こしたりしたら問答無用で貴様をギルドから追い出すからな! 分かったな?」
「へいへい、分かりましたよ」
俺はギルド長に背を向けて、外へと出る。
大きなため息を着いた後、階段を伝って下へと下がる。
一階には、クエストの受け付けなどがあるため、うるさかったり混雑する時がある。その為、ギルド長の部屋は二階にあったりする。
「それにしても、どうしたんだこれ?」
特にお祭りとかある訳でもないが、何故か通常よりも沢山の人がおり、受け付け前は賑わっていた。
さっきまでは、ほとんど居なかったのに、俺がギルド長と話している間に何があったんだ。まだ、数十分くらいしか経ってないのに。
気になったので、そこら辺に居た適当な冒険者に話しかけてみる事にした。
「なあ、この賑わいようはどうしたんだ?」
「きゃあ! 変態露出ロリコンホモ野郎!」
「ちょっと待てこら! いつから俺は変態になったんだ。あと、ロリコンとホモは併発しねぇだろ普通!」
女冒険者は、怯え何処かへと逃げ去ってしまった。よく混雑した中を走り抜けれるものだ。
とはいえ、なんで俺が変人扱いされてるんだろうか。いや、今の人が特殊だったのかもしれない。
「おい、ちょっといいか?」
今度は、男の冒険者に話しかけた。女の中で変な噂が広がってるだけかもしれないからな。
だが、男の冒険者は俺の期待を裏切り……。
「はぁ? 俺に話しかけるな、知り合いだと思われるだろうが」
ものすごく冷たい事を言ってきた。流石に、イラッと来たので、俺はそいつの肩に無理やり手をかけ、
「俺たち知り合いじゃなくて、親友だもんな! ハッハッハ!」
ギルド中に聞こえるような大きな声で叫んでやった。
「ちょ、やめろ! 分かった金か、金が目的なのか? それなら払うからよ!」
別にそれが目的じゃないが、貰えるものは貰っておこう。
男から、銀貨三枚を受け取った後本題を切り出す。
「それで、これはなんで賑わってるんだ?」
そう聞くと、心底嫌そうな顔で男は答える。
「なんか、近くの森に吸血鬼が出現したらしい。そのせいで近隣の弱いモンスターが一斉に逃げ出して、大半のクエストが受けられなくなったんだ。吸血鬼の討伐がいつになるか分からないから、貯蓄の残りが少ないやつとが、一斉に押しかけてきたんだよ」
「話が広がるの早くなかったか? 思ったより」
「そりゃそうだろ、一部のヤツらには生死に関わるかもしれないだからな」
別に、クエストが無くなったら吸血鬼が討伐されるまでバイトするとかでは駄目なのだろうか。
しかし、この調子だと俺がいつも受けてるクエストも受けれなくなりそうだな。
「あと、もうひとつ聞きたいことがあるんだが、何故俺の事をそんなに嫌ってるんだ」
「はぁ、当たり前だろ? お前のように問題行動を起こしまくってる奴が嫌いじゃない訳ないだろ。知り合いだと思われたら、俺の評価にも関わるからな」
今度、こいつの親友だということをギルド中に言いふらす事にしよう。
心の中でそう決めた後、ギルド裏から外へと出る事にした。表の外へと通ずる扉は混雑してるし仕方がない。
扉を開けると、そこには二人の兵士のような姿をする男と、何やらギルドに抗議している茶色の頭に、歯車のような髪飾りを付けている、童顔の女の子がそこに居た。
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