第1話 国内遠征


数時間前...

「やべ待って...気持ち悪い...」

ちょっと...まだ着いただけなんですけど...


「お前...新幹線ごときでも酔っちゃうのかよ...」

「とりあえず近くのカフェテリアでも寄ろっか...w」

「おう...すまぬ...」


えーと、この体力と乗り物への耐性が皆無なのが通称メガネことアララギくん。彼を現在進行形で支えているのがタカギくん、メガネとは違って運動神経抜群だ。現在最寄りの休憩所を探しているのはケースケ、バリバリのネット民である。そしていきなり人物紹介をしているのが“俺„だ。えっ?名前はって?そんなの後からでも分かるって(


...んで、俺達はSNSで知り合った仲である。その絆は短い様で長い様で...ぶっちゃけ2年半くらいの仲だ。そして今日は遥々南へ足を運んで動物園とかを巡る予定だ。


「あったよ、ここ曲がって真っ直ぐの所にカフェ。」

「さっさと休んでモフモフを見に行くぞ!!」

「時間はあるんだから休ませてぇ...」


全員、ケモナーである。


数分後...

「俺復活ッ!!」

「行け行け、動物園に突撃じゃ!!」

「下調べはしたけどどんな感じかなぁ...」

「ほらほら、先に進め~」


こんな感じだからコイツらとの付き合いは止められない...正直言って楽しい。




...


「モフモフは堪能できたな、次はどこへ?」

「あれだ、メガネが当てたクルーザー」

「チケちゃんと持ってきたよな?」

「もちろん、ここまで来て忘れたら戦犯だろ()」


さて、楽しい遠征はもうすぐ終わりに差し掛かっていた。アイツ、体は貧弱だが運がカンストしているレベルでヤバい...そんな中、俺は洗礼された知識を除けばただの一般人だ。ケースケも現実では俺と同じ一般人だがネット上では話が違う、彼は日本のネット民なら知らない人はいない凄腕のエンターテイナー、そんな有名人と俺達がリアルでも会える仲なのは、メガネの強運と行動力お化けのタカギのお陰だ。


「お〜、やっぱりこっちの海はキレイだなぁ...」

「クルーザーでっけぇ!運転役は予定通りかな?」

「ほら乗った乗った!広大な海へ案内するぜ」

「ァ...これ俺船酔いするじゃん...()」


今回俺が活躍できるのは船を動かすくらいだ...

エンジンを掛け、俺達は海へ飛び出した...


約一時間後...

「ようやく酔いは治まったかな?」

「なんとか...ウッ...」

「こりゃあと数分は掛かるなw」

「さて、随分遠くまで来ちまったな...早く帰らないと日が暮れるかもな」

「よし、そろそろ戻るか...ん?」


俺が見ている方向に船形が見えたような...気のせいか?


「おい、何だあの船...こっちに向かって来てるぞ」


本当に船だったのか...ん!?あの船...まさか...


「...これは、ヤバいな」

「「は?」」


二人は顔を見合わせている様だが状況は非常に不味い...


「フルで飛ばすからしっかり掴まって、姿勢を低くしろ!」

ブォン!!ブォォン!


「うわっ!?飛ばし過ぎだろ!そもそも何で逃げてんだ?」

「あれが海賊船だからだよ!!捕まったら殺されるぞ!」

「ちょっ...マジで?」


一般的に皆が想像する海賊は、不思議な実を食べたゴム人間か、はたまたパイレーツなカリビアンを想像するだろうが全く違う、漁船や遭難船に見せかけた船上に違法製造された銃器を所持した国籍不明の野蛮人が乗っている、いわば現代の海賊だ。


「おい...もうすぐ側まで来てるぞ!?」

「これが最高時速だ!乗ってきたら俺が対処するから運転変わってほしい...あぁクソ、天候まで怪しいぞ」

「どうやるんだよ!?」

「レバーが速度、ハンドルで舵だ!俺は後ろに居る二人を避難させてくる!」

「あちょっ...ああクソどうにでもなれだ!やってやるよ!」


場所:クルーザー後方にて...


「な...何か来てるんだけど!?」

「アイツがいきなり船を出した理由が分かった...イカれてるのか知らないけど何で僕達の船を追い掛けてるんだ...?」

「...おい!早く前側に来い、死にたいのか!?」


彼がアララギとケースケに呼びかける...

それと同時にケースケが立ち上がる。

「ねぇ!あの船何なのさ...僕達の船を追い掛けt...」「ばっか!?しゃがめお前!?」ドン!!


...ババババァン!!

伏せるのと同時に何かが破裂する様な音が響き渡った。


「うっわ!?メッチャうるさ...今の何!?」

「銃だよ!!死ぬ所だったぞ!?」

「はぁ?銃なんて日本で一般所持してるわけないでしょ?てか重い...」

「今撃たれただろって...ほら船の壁見ろ」


指差した方向には、金属でできた船壁にくっきりと弾痕があるのがはっきりと見えた...


「...マジ?」

「本当に持ってるとはな...ん?メガネどこいった?」


「ちょ...腰が抜けて動けない...」ガクガク...

「はぁお前...」


カァン!!

音の方向で金属製の物が引っ掛かったのが見えた...


「マズい乗り込んでくる!?ケースケ、ビビってるメガネ引きずって前側に避難しろ!!」

「ちょっ...君、避難はどうするの!?一体何する気!?」

「俺まで逃げたら誰が食い止めるんだよ?みんな仲良く蜂の巣にされるぞ...」

「そ、それは...」


俺は幸いに、護身用のナイフは持ってる...それで何とか出来れば...


ガタン...ドン!

『オイ、この船に乗ってる奴出てきやがれ!!』


...片言の日本語で男が怒鳴っている。


「ほら、早く逃げろ」


「...気を付けてね?」ダッ!

「や、優しく引きずって...」ザザザ...


ザァーー...

「...? いきなりどしゃ降りかよ...」

予想通り嵐にも入ったか、つくづくついてないな...さて覚悟を決めよう、まさかこんなことになるとは思ってなかったが...




...

『出てきやがれ!!大人しく出てきたら生かしてやる!!』


悪党お馴染みのセリフだな、絶対殺すだろ...それ...


どうやら男は仲間に船に乗るように伝えているようだ...

『チッ...こっちから行くぞ...』カチャッ...


銃を構えながらこちらへ歩いて来ている...


そうだ...もっとこっちに来いよ...

真横にまで来い...

『なっ!?このやろu』「ふんッ!!」

『ぐあッ!?放しやがれ!!』


相手の体制を崩した直後、銃の奪い合いに発展する...


『クソッ!放しやがれ!!』

「こんのッ...!フッ!!」ガッ!!

『ぐっ!?』


...ババァン!!

『ギャァァア!!やりやがったなッ...!!ウゥ...』バタッ...

「はぁッ...!はぁッ...!?」


やった...やっちまった...相手の足に...銃を...


『おい!!仲間に何しやがる!!』ダダダダダァン!!

「くっ...危ねえんだよ!!」バババァン!!

『グッ!?ウッ...』バタッ...


男は胴体に銃弾を食らい倒れた


「もう終わり...?」

『くっ...くたばれ...』ゴトッ...


ピッピッピッピッピッ...

タイマーが付いている何かを海賊が落とした。


おいおい置き土産の爆弾!?ヤバいって...!!

「...ッ!!」バッ!!


爆弾を拾い上げ、一目散に海賊船へと向かう...タイマーの時間は約1分だ...


フッ...ドン!!!

海賊船の船上に飛び移り、フックを外す... その後、操縦室へ行き進行方向をずらした...


「後は逃げる準備を...うッ!?」ガシッ!!

『大人しくしやがれ...よくも二人を...』


まだいたのかよッ...!!


『死にやがれ!!』「ふん、嫌だね」ザシュッ!!

『ぎゃああッ!!腕がァ!?』


残り10秒。

「逃げッ...ぐあっ!?マズっ...あっ」ガシッ...


...荒れた波のせいで体が船の外に放り出された。何とか海に転落はしなかったものの皆の乗るクルーザーと海賊船が数十メートルも離ればなれになり、それとほぼ同時に...


...{00:02}ピッ...


...{00:01}ピッ...

「あぁ...本当についてないわぁ...」パッ...


...{00:00} ピーッ...


...

タッタッタッ...

「おい!!無事なのかよ!?」

「ひいッ...あの人達血が...」

「...カズ?あれ...海賊船...」



...ドオォォォン!!!!

とてつもなく大きな爆発とともに海賊船が木っ端微塵に吹き飛んでしまっていた...


「...えっ、えっ??何なの?」

「おい...嘘だよな?まさか...!」

「あぁ...うわあああああ!!!...カズさあぁぁぁん!!!」









...

まだ...生きな...ければ......ゴホボッ...

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