主人公
鳥野ツバサ
主人公
「待たせたなぁ!」
とある晴れた日曜日、俺は友人とボウリング場に行くことになっていた。
駅前の交番近くに佇むこと30分、ようやく現れたのが彼、成田。
とてもいい奴ではあるのだが――
「おいおい遅えぞ。連絡もせずなにしてたんだよ」
「俺は遅れてきた。だから俺は主人公だ!」
こういう奴なのである。
中学の時から共通の趣味があってつるんでいた仲間で、別々の大学に行った今でもちょくちょく集まっては遊んでいる。
先週は3人でパンケーキを食べに行こうとしたのだが、もう一人の竹石は「ちょっと遅れる~」と送ってきたきり来なかった。
今日は一人でも行くつもりだったところをなんとなく誘ってみただけなので来なくても大丈夫なのだが、まだ既読すらついていない。
大丈夫だろうか。
「あのなぁ、仮に『主人公は遅れてくる』って定義が成り立ったとしても『遅れてきたから主人公』が成り立つとは限らねえんだよ」
「まぁまぁそんな細かいことは気にすんなって。俺が遅れてきたことに変わりはないんだから」
「いや、開き直るなよ。それに、どうやらお前は主人公にはなれないらしいぞ」
「は?」
何故そんなことを言ったかといえば、改札口から走ってくる人影が見えたからだ。
「ごめ~ん、遅れちゃった!今日はパンケーキ食べに行くんだよね?」
彼女こそが竹石、成田の定義に従えば俺たちの主人公である。
主人公 鳥野ツバサ @D_triangle
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