シーン 4

 あまり太陽が強くない。昔、すずりチャンに出会った公園の植え込みに行ってみようと思った。道路の先まで出て、ゆるやかな坂道がある。そこを下ったところのはず、そんなに遠くないと思う。坂を下りていくのは初めてだ。途中、ブロック塀の上に白い猫が寝そべりながら、こっちを見つめている。視線を感じながら注意深くその下を歩く。向こうの視線はまだ追ってきている。争いたくはないので真っ直ぐ下を目指したのだが、近づいた時、何故だか懐かしい匂いを感じた。何事も起こらなかった。


 しばらくしてあの公園が見えてきた。そうだ、あの角の植え込みだ。小さな男の子がブランコに乗っていた。側で女の人がバギーを支えながら、ブランコを押している。変わらない。あとは小さな砂場とベンチがあるだけだ。植え込みも変わらない。この光景は忘れない。けど、何故俺はあの時ここに居たのかは思い出せない。それ以上は、あの雨が降って寒い日、女の子が近づいてきて、やさしく抱き上げてくれたところから猫としての生活と記憶が始まったのだと思った。


 帰り道、もうあの白い猫は居なかった。けど、まだあの懐かしい匂いがかすかにしている気がした。この坂道は、昔の俺と今の生活を別ける扉のようなものだったんだと思いながら、ゆっくりと歩いて我が家に向かって戻っていった。


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