第12話

 生物部の活動が終わった後、生物室で私と譲がゲノム編集とかジャンクDNAとそれぞれ素人が覚えたばかりのことを得意になって話していた。

 準備室のドアが開いたと思うと、顧問の先生が顔を出した。

「横川、校長から電話だよ」


 今、校長室に警察が来ているとのことだった。私の家で何かあったらしく、校長はあたふたとしていた。

 私はパトカーで病院まで送られていったが、途中車の中で警官からことの次第を説明してもらった。

 病院の死体安置所に冷たくなった父と母の体が冷たくなって横たわっていた。

 

 警察に110番通報があった。電話をかけてきたのは母であった。父はその時すでに息絶えており、母は最後の息を振り絞って、やっとの事で電話をかけてきたそうであった。警察が駆けつけた時には父と母の息をしていな身体が横たわっていた。


 父と母が殺されるなんて。高二の時に両親を失ってしまうこのことの事実は、過去に戻ることができても変えることができないのだろうか。

 父と母を殺したのはあの詐欺師ではないかとすぐに思った。父の貯金通帳を探し出した。それほど時間をかけずに見つけることができた。銀行のATMで記帳をすると、思った通り、土地の売買で入金した額のお金がなくなっていた。おそらくあの詐欺師が父と母を脅して小切手を切らせたのだろう。詐欺師は、銀行に行くまでに父に連絡されて、小切手の支払いをスットプされないようにと、父と母を殺してしまったのだ。心中に見せかけようと父に刃物を持たせたのだ。

 結局また両親は自殺してしまったことになる。崖から車で転落したのが、自宅で刃物で自殺に変わった。結果は同じ時期に父と母が同じ場所で命を終えてしまった。

 銀行で小切手の振出人を確認するとあの詐欺師であった。あの詐欺師が犯人であることを確信することができた。このことを警察に行って全て説明したが警察の父と母が自殺したという方針は変えることができなかった。


 誰もいない暗くなった居間の電灯をつけた。明るくなった部屋の中で私の目に最初に飛び込んできたのはテレビであった。私はすぐにテレビの電源を入れた。CM放送の後、『私の街の風景』の放送が始まった。私の住んでいる街の商店街の映像が映し出された。カメラは住宅地の中に入っていった。私の住んでいる家の外観のアップが映し出された。身体全体が心地よい暖かさで包まれるのが感じられた。暗闇に囲まれた。暗闇の中で美しい光が点滅し始めた。その光は少しずつ輝きを増していった。あまりにも眩しい光と色にうっとりとした。父と母を失った悲しみを飲み込むように光と色は私の周りで渦巻き始めた。意識が朦朧としていくのを感じた。

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