第17話 複合術式
「
光り輝く剣を五本出し、射出する。
狙いはレオナルドの胸。相手は魔王、悪いが手加減はしない。
「はっは! 速く、正確な良い魔法だ! だが……」
レオナルドは拳を硬く握ると、なんと光剣を殴って壊してしまう。
「強度はイマイチだな、素手で壊れてしまったぞ」
「そんなこと出来るのあんたぐらいだよ!」
ツッコミを入れながらグラムナイフの刀身に指を添える。
「術式纏刃、
グラムナイフの黒い刀身に赤い線が走り、次の瞬間物凄い熱を帯びる。
うん、初めてやったけどいい感じだ。ビスケはいい物を作ってくれた。
「くらえ!」
ナイフを振るうと半月型の火の刃がレオナルドめがけて飛ぶ。二度三度と振るたび火の刃が出現し襲いかかっていく。
グラムナイフが魔力変換装置となっているので、術式を思い浮かべず魔力を消費するだけで火の刃は生まれる。こりゃ楽でいい。
「おっと! それは流石に当たりたくないな!」
奴の分厚い胸筋でも流石に受け止めるのは躊躇ったか。
「よしこのまま炎の刃で攻め……ん?」
何を考えたかレオナルドは突然その場にしゃがむ。
そして手を地面につき、片足を前に出し、もう片足を後ろに下げ……ってこれクラウチングスタートのポーズじゃねえか!?
「行くぞッ!」
物凄い勢いでレオナルドは駆け出し、距離を詰めてくる。
「
咄嗟に三個ほど土壁を出すが、どれも一瞬でぶち抜かれてしまう。なんて速さと突破力してやがる。おいおい、そんな速度で体当たりされたら人間の体なんて木っ端微塵になっちまうぞ?
「術式展開、
二枚の盾を交差して設置、レオナルドの進行方向に置く。
真っ直ぐ突進してきたレオナルドは高速で
「ぬう? 硬いな!」
そう言いながらもレオナルドは拳で
ロックビーストの攻撃も受け止められる
だがこの程度予想の内。
見せてやるぜ、
「おいグラム。お前も術式を使ってくれ」
「は、はあ!? 俺様がそんなこと出来るはずねえだろ!?」
「誤魔化さなくても知ってるぞ。お前が隠れて術式の練習をしてることは」
「なにィ!? てめえ知ってやがったのかよ!」
グラムは夜な夜なこっそり俺の使った術式を、見様見真似で練習していた。
元々は俺に対抗する手段としてやっていたんだろう。でも俺は気づいているぞ、お前が段々術式の研究を楽しんでやっていることを。
気持ちは分かる。こんな楽しいもの、ハマらない訳がないよな。
「別にそのことを怒るつもりはない。むしろ嬉しいくらいだ、俺の術式に興味を持ってくれたんだからな」
「んだよ気持ち
そう言いながらもグラムの声色は少し嬉しそうだ。
自分の努力を人に知ってもらえるのは嬉しいよな。
「今の俺じゃ固有術式を一度に一個しか発動出来ない。二つ以上発動しようとすると脳のメモリ不足でオーバーヒートしちまうからな。でも俺とお前なら……」
「脳が二つになるから同時使用可能になる、ってわけか。確かに理に叶ってるな」
グラムは意外と飲み込みが速い。特に魔法関係に関しては目を見張るものがある。やっぱり魔剣だから普通の人より魔法への理解が速かったりするんだろうか。
とにかく、こいつが手伝ってくれれば俺の術式はもっと進化する。この手合わせはいい機会だ。
「魔力は俺のを使っていい。組み合わせるのも俺がやるから、お前は自分の術式を構築することに集中してくれ」
「ったく、まだやるって言ってねえのに勝手な奴だ。だがまあ、二つの術式を組み合わせるのに興味があるから手伝ってやるよ!」
ふん、ツンデレな奴だ。
俺は一人笑みを浮かべると、ナイフを構える。
「そんな小さなナイフで我輩とやり合うつもりか? 見くびられたものだな!」
「まあそう急かさないでよ、いいもの見せてあげるからさ……!」
脳内に術式を構築し魔力を流す。それと同時にグラムナイフにも同じ量の魔力を流す。
大事なのは
「いけるかグラム」
「へ、お前こそ」
準備は整った。
行くぞこれが俺たちの新技!
「術式展開、
「術式展開、
俺の周りに展開されるのは二本の光の剣と盾。
魔力がゴリっと減ったが……成功だ。
「名付けて複合術式・
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