第3話 発見
「ん? あれは……村?」
森の中をしばらく進んで行くと、木造の家が数軒目に入ってきた。
こんな所に村があったんだな。そう感心してるとメイドのシルヴィアが村を指さして説明してくれる。
「あそこはズブト村といいます。ビキニール山脈の麓にある唯一の村で、ゴブリンが住んでいる小さな村です」
「へえ、そうなんだ」
ゴブリンとは人間の半分ほどの背丈の小柄な種族だ。
ずんぐりむっくりしてて肌は緑色と特徴的な見た目をしている。
そんなゴブリンだが、彼らは王都でもよく見かける魔族領では比較的メジャーな種族だ。
ま、王城で働いてるゴブリンはいないから知り合いにはいないんだけどな。
「あの村には宿があるはずなので、そこで一晩休んでから明日の朝から山脈に行きましょう」
「ん、そうしようか」
今の時刻は昼過ぎ。
たくさん走ったしこのまま山登りをするのは危険だろう。この村で休んでから行ったほうが賢明だ。
やっぱりシルヴィアは頼りになるな。
「さ、フードをしっかり被ってください。見つかったら大変ですからね」
「ちょ、ちょっと待った!」
フードを無理やり被せようとするシルヴィアを止める。
シルヴィアは俺の顔を隠して村に入って、宿に押し込めるつもりだろうがそうはいかない。
せっかくこんな所まで来たんだから村を散策したい!
「アル様、気持ちは分かりますが人間であるとバレれば騒ぎになってしまいます。ここは我慢して大人しくしてただけませんか?」
「まあちょっと待ってよ。考えがあるんだ」
本当はこの魔法をシルヴィアには見せたくなかったけど……背に腹は替えられない。
俺は右手の指先を自分の左腕に押し当て、術式を発動する。
「術式魔法、
「……へ? な、何をしたのですか!?」
術式を発動した瞬間、シルヴィアは驚き目を丸くする。
それもそのはず、今の彼女の目には俺の姿は魔族のように映っているのだから。
「魔法『
頭部から生えた二本の角に尖った耳。どっからどう見ても人間には見えない。
羽根と尻尾はないけど、この二つは普段小さくして見えないようにしてる魔族も多いから大丈夫だろう。
「こんな魔法を開発してしまうとは……流石です! アル様は天才ですね!」
「ふふん、これくらい簡単だよ」
「ところでこれを使って街に出るつもりだったんですか?」
「ふふん、まあね…………って、しまった」
つい乗せられて本音を漏らしてしまった。
シルヴィア……恐ろしいメイド!
「アル様、元気なのはいいですけど、あまり心配させないでくださいね」
「うん……分かってるよ」
シルヴィアや他のメイドたち。そして魔王のみんなに迷惑をかけてるという自覚はある。
でも溢れ出る好奇心は止まらない。みんなのことは大好きだけどこの気持ちだけは抑えることは出来なかった。
「反省してるようですし、このことを報告したりはしません。ですが無茶をする時はちゃんと言ってくださいね?」
「うん、分かった。約束は守るよ」
好奇心は止められない。
でもなるべく心配はかけないよう気をつけよう。そう決めた俺はシルヴィアと手を繋いでズブト村へと入っていくのだった。
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