第二三部「消える命」第2話 (修正版)
西暦にして一四六七年。
後に
二人がやっと辿り着いた
小さな神社。
住居と繋がった小さな本殿があるだけ。
現在の当主は
他の家族は
世の中が少しずつ疲弊して
どうしても、仲間が必要だった。
その為に
兄の
到着したのはすでに薄闇の頃。旅で疲れたスズが眠りについてから、
「そうか……御苦労であった。どこか大きな所が賛同してくれるとよいのだが…………」
「左様です……誰もが世の中を
「我等に力があれば良かったのだが…………」
本殿の隅に灯していた
真夏はすでに終わり、夜になると風の温度は途端に下がる。その夜の空気も冷たかった。
流れる空気を感じながら
「…………あの娘……あれも
「スズですか……はい、親に捨てられたそうにございます…………
「そうか……」
その
──……もしかしたら余計な事であったか…………
そう思った
「
意外な
「しかしながら……恐ろしい力も有しておりました…………」
「恐ろしいとは…………」
「総てを見たわけではありませぬが……手を触れずに人の命を取る事が出来ました…………しかも何人もの男達を相手に……顔色一つ変えなんだ…………」
「……そうであったか…………」
流石に
その
「それでここに?」
「いえ、拾ったのは私も〝力〟を知る前です」
そしてゆっくりと
「……不可思議な
口元に笑みを携えた
「以前より考えおりし
「……神……ですか…………」
「いかにも……
「それでしたら
「しかし今の
「……
そう返した
反射的に口調が強くなった
「〝
「しかしながら…………それは
無意識に
しかし
「それこそが神ではないか。
「兄上! そのような御考えは危険です!」
強い風が吹く。
「……緩いぞ
その
──……
──…………ただの…………人形ではないのか………………
──……神は…………どこだ………………
☆
その刃は未だ冷たいまま。
刃が横に引かれれば、
その命は、
誰も気が付かなかった。
それは
それでも
だからこそ、見えた。
本殿の中で立ち尽くす
背後には
──……
──……何を考えているのか…………私に勝てる者など…………
そんな思考が頭を巡る
「
すると
「……必要であれば…………」
「……私たちは違う…………
「綺麗事で復讐は出来ません……」
やや強くなった
「スズって誰?
「スズは……」
「……
その言葉は
「…………始まり…………」
そう小さく呟いていたのは
同時に、それを信じなければ
そんな母である
「つまり……スズの存在を利用して
すると、
「……そうです…………」
その
背後の
次にその
「だってさお母さん。何が
「おかしいと思ったんだ…………時を超えられるあなたが、どうして昨日……
意外にも
「
「そうだね……それは否定しないよ。でも
「その理由を御聞きになりたいと?」
「うん……
「
そう言った
その
──……
しかし今、
同時に、次の展開が見えない不安。
──……邪魔をしているのは……誰だ…………
「
「
「ホントにそう?
事実だった。本来ならば
「……
しかし、それは
「へー…………
「……嘘などと…………」
「勝てないはずだよ…………だって
「────
──……気が付いているのか…………
「なら…………私には、勝てるの?」
しかし応えない
「じゃあ……殺される側の私は対抗するしかないね。その前に質問をさせて。さっき
そしてやっと
「……いいでしょう……では……
そう言う
──……この場を
☆
西暦にして一四六八年。
戦乱は未だ続いていた。
スズが
スズは〝神〟として祭り上げられていた。
新たな名────
その総ては
朝廷が真実を隠すために
それに多くの神社が真実を知らないまま賛同を始める。
その効果は絶大だった。
少しずつ
──……本物の神だ…………
そして
「
月に一度の
「確かに〝
しかしその歯切れの悪い言葉はすぐに
「貴様が見つけてくれた〝神〟ではないか。いずれは
対する
「しかし兄上……かような嘘…………いずれは…………」
その
「案ずるな
しかしその目は、かつての
「今はまだ良いでしょう……しかしいずれは跡取りの問題もあるではありませんか⁉︎」
「では、どうであろう
「……? 兄上……それは…………」
──…………何をするつもりか…………
「さすれば
──……
──……気でも違ったか…………操作されているのか…………
「しかしなれど兄上にはすでに世継ぎが御二人もおるではありませんか」
「
「────兄上‼︎」
「近頃は
すでに、
それから二晩も経った頃だろうか。
すでに
布団の中で上半身を起こしたスズに向かい、
月明かりがやけに明るい夜だった。障子を過ぎるその明かりは、容赦無く室内に強い影を落としている。その陰影の強さが新たな影を生み出すのではないかと思う程に、
「……
スズはいつもと同じ、感情を表さない顔のまま。
スズが笑ったところを誰も見たことがなかった。常に同じ表情を崩さない。しかし冷徹にも見えるその雰囲気は、スズの人間離れした神秘性に拍車を掛けていた。
そのスズが、小さく口角を上げる。しかし頭を下げたままの
やがてスズが口を開く。
「ほう…………
「はい」
「タネは
「…………はい」
しかしその気持ちを後押ししたのは、スズだった。
スズは
もちろん
しかしスズは自ら
「我の見た〝
「……おそれながら
「
そのスズの言葉に、
そして少しだけ前ににじり寄った。
──……この後に及んで
上半身を上げかけた時。
背中に圧力を感じた。
その強さが再び
体の中心を何かが突き抜けていた。
その何かは畳まで到達し、大きな亀裂を作る。
しかしそれが
腹部が熱かった。
体が上がらない。
その体の上で、長い刀を両手で持っているのは
途端に
少しずつ、体の中心で恐怖心が膨れ上がる。
それを打ち消す為か、
何度も、抜いて、突き刺した。
畳に広がった血溜まりが、月明かりを黒く照らす。
その光景を、スズが無表情に眺めていた。
まるで、総てを知っていたかのように、微動だにしない。
しかし、その両目だけは月明かりの中で存在感を持っていた。
怪しく光るその目には、動かなくなった
息が荒い。
その体は黒く染まっていた。
その
「……スズ……逃げろ…………このようなことは……人として許されぬ…………」
そして、スズが静かに。
「……やはり……
そう言うと、その顔に、小さく笑みが浮かぶ。
初めて見るスズのその表情に、
「…………スズ……」
「……まだだ
その声に、
構わずスズの声が続いた。
「貴様の子を産む為に、
「……
自分の意思とは関係なく、言葉が口を開かせる。
もはや、
初めて人を殺した。
実の兄を殺した。
戦乱の世を立て直そうとしていた
スズの目を見ながら、
そのまま足を進めた。
まるで留めを刺すように、スズの口が開く。
「………
そして、部屋中に血の匂いが滴る中、
その夜の内、
まだ幼かった二人の世継ぎ。
しかし
総てはスズの〝
すでに、
それから、およそ
スズに三つ子が産まれる。
スズは出産の翌日、早速こんなことを言った。
「子達は
「しかし
「濃い血が出来る……
「そのような
──……何が見えているのか…………
「新しく
「……新しく……
それから程なくして、
どの神社も
権力の為。
その日訪れた者。
当主、
まだ当主になって間もない。当主になってすぐ、
急激に勢力を拡大していく
年齢すらも分からない、謎に包まれた神。そして
誰もがその〝血〟を求めていた。
それは
「
三段構えの階段状になった一番上にスズが座り、その一段下、僅かに向かって左に
もちろん
見た目はどう見ても子供。十歳程にしか見えないが、顔付きは聞いていたよりも幼く感じた。しかしその目だけは噂以上のものだ。
子供の目とは思えなかった。
強いだけの目ではない。吸い込まれるのとも違う。
──…………人間の目ではない
同時に感じるのは、恐怖とは違った。
言葉を返したのは
「
混乱の世を
──……
「かなざくらの古屋敷」
〜 第二三部「消える命」第3話へつづく 〜
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