第十九部「夜叉の囁き」第4話 (修正版)
「
竹の筒を握った左手に力が
すると、その
「あんた
そう言い放つ
子供と勘違いされそうな小さな身長に
その
「我らの信仰を妨げに来たか────貴様らを信仰する気などないぞ」
「信仰?」
足を止めた
「笑わせないで。神だの仏だのと…………目に見えないものに
「────ならば、今貴様の目の前にいるものは何だ」
「……見えてるよ……全部…………あんたが何者なのかも…………ここがどういう場所なのかも…………」
その目に、気持ちを妨げるコンタクトは無い。
──……なんで今まで抑えてたのかなあ…………
そんな言葉が頭に浮かんだ
「……
それに
「……情けない話…………
その時、周囲に乾いた音が広がった。
突如、周囲は夜の闇。
月明かりすら無い夜の暗闇。
瞬時に〝影〟が闇に紛れる。
──……見える…………〝影〟がバラけた…………
「……
しかし、
「…………なんだ────」
「……あなたは無力…………あなたに〝力〟なんか無い…………」
「力が無いだと…………」
「ほら…………私には勝てない…………」
すると、膝を着いた
すると、
「…………まさかね…………私が、勝てるわけがない…………」
影がしだいに大きくなった。
その光景に恐怖を感じていたのは、
左手には竹の筒。
その左手を大きく上に、右に素早く振る。
筒から振り撒かれたのは〝火薬〟の粒。
それは空気に触れた直後、それぞれが小さく光る。
瞬く間に
「────っ! ────
振り向いた
☆
長女だった。
しかし、産まれて欲しいのは長男。
子供が無事に産まれたのは嬉しいことなはず。しかし
当時は定期的に出入りしていた
出入りしていた
長女の前に、先に長男が欲しかった。毎度同じサイクルを繰り返すことで生まれる〝念〟が欲しかった。
新たな〝鬼〟が必要だった。
こういう場合、
最低でも一人、
それは
長男が産まれた五年後に長女が産まれなかった場合は簡単だ。女の赤ん坊を誘拐してくればいい。
今回欲しいのは男の子。いつも年齢は大雑把。大体の年齢ということにする。あまりにも年齢が離れている場合は新たに誘拐して記憶を消す。
しかし今回はちょうど四才の男の子がいた。五才ということにして
最初の報告は母親の
成人した長男は
時が経ち、
総てはしきたり。
やがて二人の間に長男が産まれる。
それから数年。
五年が経っても長女が産まれない。
そして
気持ちのどこかに、迷いがあった。
記憶は確かに変わっている。大丈夫なはずだった。
しかし
「何か…………気持ちのどこかに……わだかまりが御座います…………」
夕食の直後、
「……わだかまりとは…………〝
「せっかく娘も産まれたばかり…………母が〝
「……何か…………これは間違っています…………」
その矛盾は
──…………自分の記憶も操作出来たら……………………
☆
それは緊張と共に瞬時に広がる────。
しかしその直後、その火は眩しく光り、弾けた。
やがて、ほっとする
「物理に〝
そう言った
「大丈夫…………そのまま…………動かなくていい…………」
立ち上がった
「……〝水の玉〟か…………」
すると、すぐ背後から声。
「────〝火の玉〟もあるよ」
それは
その声が続く。
「もう一回燃やす?」
いつの間にか小さく体が震えていた。
そしていつの間にか、黒い影はすでに無い。
「……〝第六天魔王〟か…………前回ここに来た時に気付いたよ……本当にこの神社が信仰してるのは仏教の教義に反した第六天ね。あれは悪魔だ…………
☆
第六天魔王は元々仏教の教義に反した信仰。
歴史的に
そして
そして
〝悪魔〟に命を捧げてきた。
〝鬼〟と共に生きてきた。
それは同時に
──…………噂通りか……………………
階段ですでに禍々しさを感じる。
左右の森からの視線は一つや二つではない。そこには
様子を見ているのか、それとも手を出せずにいるのか、それは小さく
階段を登った先の鳥居で、その結界は更に深くなった。
本来であれば
──……強力だ…………扱いにくい……………………
「
本殿からのその声は、
「要件は何だ。それしだいでは話を聞く」
その声に、
「第六天魔王を信仰しているのはお前たちか。我々の神道にはすでに仏教との争いは存在しない。
「ほう…………我らを支配したいと申すか…………」
──……恐れているのは…………どっちだ……………………
そう思った
「ここも
「
──…………
周囲に黒い
それはしだいに形を作り始める。
しかし、見えない。
──…………この影は……………………
「────何者だっ!」
いつの間にか、恐怖に包まれる。
その震える神経を刺激するのは
「…………
周囲からの視線。
目には見えない。
しかし、何かがいる。
どれだけの数の視線なのかも分からない。
──……違う……これは……第六天ではない……………………
☆
「……第六天でなければ…………何だと…………」
それはただの恐怖だけだろうか。体が僅かに震える。
「知りたい?」
背後からのその
何の疑問も持たずに信じてきた。
しかもそれはただの伝承などではない。実態として姿を見せていた。
いつも側にいた。だからこそ何者も怖くはなかった。
しかし
──……何が、違う…………?
そう思った
「……ずっと…………
「必要かどうかじゃないよ…………」
少し柔らかく感じる背後からのその
「信仰が違うだけ…………でも、
「…………あれは………………」
未だ震える
「…………〝
「────馬鹿なっ!」
その
背後からの
「…………ここで私たちを待ってた…………長い間ずっと…………」
「……そんな…………」
そう呟き、目を見開いて体を震わす
「…………私の中にもいるからね…………本人が教えてくれた…………あなたたちが
その体が大きく震える。
そして
「でも……
そして
「物理的な確証なんか無い…………でも、信じるしかないし、信じられるからとしか言えない…………今は、
そこに、
足音。
低めのヒール。
鳥居に人影。
そして立ち尽くす
「……
それを見ていた
「────彼女が来た…………」
その声はなぜか
そして、
「……
「…………潰すようにと…………指示を受けております…………」
「
「……私はそのために来ました」
「嘘ね。あなたは本命じゃない…………操られているだけ」
──……本命? 操られている? …………馬鹿なことを…………
そう思いながらも、
「私は自分の意思でここに来ました────」
そこに、本殿の
「それは嘘」
それに対して
「
「本命を連れて来なさい────
力強さを持った
応える
「本命など…………」
──……なに? 何を言ってるの…………?
そこに、
「────〝娘〟…………あなたの一〇才の娘に会わせなさい。
──……………………
「……あの子が…………何を…………」
そう言葉を漏らした
「……忘れてた過去を……思い出させてあげる…………」
「かなざくらの古屋敷」
〜 第十九部「夜叉の囁き」第5話(第十九部最終話)へつづく 〜
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