第18話 ふたつのシルバーリング
「寒…」
目を覚ますと、とうに空は薄明るくなっていた。動いたせいで辛うじて肌を覆っていた保温力のない毛布が滑り落ち、冷気が肌に浸透していく。
飲みかけの缶チューハイを残したままの机。風呂場からベッドまでのあいだに捨て置かれた下着。こんなふうに朝を迎えたのは初めてのことだった。横でぐっすり眠っている彼の顔がずいぶん情緒的で、まるで映画をみているようだった。
素肌と素肌を触れ合わせながら、ぼんやりとみている朝日が、これから日常になっていくのだ。愛に溢れているときもあれば、時間に追われているときもあるだろう。眠れずに迎える朝日もあるだろう。
服や化粧は纏わない。ひとつだけ身につけているシルバーリング。昨夜ふたりで右手から左手に付け替えた、たったふたつのシルバーリングと朝を迎える。
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