第11話 おかえりなさい
今日は私たちの結婚記念日。
長年連れ添った私たちには今更特別な企画はない。最初の数年間は頑張っていろんなところに出かけて、旅行したり素敵なレストランに行ったりしたものだけど、いつしかとても簡素なやり取りだけで済ませるようになっていた。
毎日指につけている指輪を外して、互いに渡してクリーナーで磨く。これ以上ないくらい丁寧に磨きあげる。そしてきれいになった指輪を、まるではじめての時みたいにお互いの指につけあって「これからもよろしくね」といってキスをする。
少し膨らんだ指は窮屈そうで、それでもすっぽりと馴染む肉が愛想をはらんでいる。本当は、あなたが外で何をしているのか、私は知ってるの。だけど笑顔でこの家に帰ってきてくれて、笑顔で私を抱きしめてくれるなら、もうそれでいいって諦めているのよ。だから今年も気づかなくていいの。愛してる。今年もよろしくね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます