第10話 10月31日(日)

10月31日(日)

 パパ、ママは今日もお出かけ。昨日、残ったGo to eatのチケット2000円分を使い切るんだって。フルーツパフェやかき氷が美味しくて有名な武雄のカフェ・レストランへ行った。

人気の店だから夏のシーズンに行くより混んでなくて大丈夫かなと出かけて行った。

でも、そこのフルーツパフェ、2000円するからどうしたんだろう? 一つ買って二人で食べた?

ううっ、仲良し。

あたいも食べてみたい。舐めてみたい。きっと甘いんだよね。猫もアイスクリーム好きなんだよ。



パパ、ママおかえり。

えっ、フルーツパフェ食べなかったの。スムージー二つとピザ一つ。そっか、そっか、スムージーも美味しかったんだね。ピザを二人で食べたんだ。


ママ、リハビリやってくれるの? やろうやろう、今日は行けそうな気がする。



どお? あたい立ってない?

足で支えてない? ほら、進めるよ。あっ、いてっ。すぐ転んじゃうけど、歩いてるでしょ? 足は変な感じだけど前に進んでるでしよ。あっ、いて。また転んだ。歩いてるんだか転んでるんだか。ママあ、自分で歩いてるよ、嬉しい。ママ、ママ、ママあ、捕まえた。

「おお、すご〜い。スピちゃんが立った。スピちゃんがたった」


アルプスの少女ハイジのセリフ『クララが立った』になぞらえて、ママが言ってる。


『クララが立った』って、車椅子のクララが本当は歩けるのにそれに気づいてなくて、犬のヨーゼフを目の前に驚いて立ってしまうという感動的なシーンのセリフなんだって。パパとママは、子どもの頃、毎週、日曜の夜にアルプスの少女ハイジを見てたんだって。あたいはクララとは違うわ。院長先生の言葉、神頼みだけど信じてるからバンバン歩いてみせる。


『幸せは歩いてこない だから歩いて行くんだね

一日一歩三日で三歩 三歩進んで二度転ぶ ニャン生はワン・ツー・猫パンチ 汗かき顔舐め歩こうよ あなたが転んだ周りには笑顔の花が咲くでしょう 腕をついて足を上げて ワン・ツー・ワン・ツー 休まないでリハビリ ニャン』

何これ? 水前寺清子365歩のマーチね。古すぎない。いい歌ね。あたいは、まだ365日も生きていない。一年経った頃には、ちゃんと歩いて見せるわ。こんなのんびりはしてられない。ママ見ててね。


ママ、下のリビングにいるパパにも見せに行こう。



「スピちゃんが立った。スピちゃんが立った。ほらね」


パパあ、あっ、いてっ。転んだ。パパ、パパあ。ほらね、あたい歩けるよ。パパにダイブ。パパあ、パパ抱っこ。


「おお、スピちゃん、凄いじゃん。速いねー。凄い、凄い、やったね、スピちゃん、抱っこしてやる」


パパ、これなぁに? 


「これは、ファスナーの持ち手、食べられないよ。歩けるようになって良かったね、良かったね、スピちゃん」


うん、パパありがとう。あたいどんどん練習してもっと歩けるように、走れるようになる。

いた、パパ、顎に痛い髭ついてるね。あたいの髭とは違うね。


 パパは、あたいを引き取ることになった時、あたいがお兄ちゃんたちとソファの上を走り回る姿を一生懸命思い浮かべてたんだって。想像出来ることは叶うってね。

パパ、お金持ちになる夢まだ全然、叶ってないんだよね〜。流れ星にも『金持ちになりますように』と唱え切ったのにね。大丈夫、あたいからも神様にお願いしといてあげる。

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