第8話 10月20日、21日、22日、23日
10月20日(水)
ママおはよう。
大学行くんだね。こんな時は朝早く起きても大丈夫なんだね。何時も起きるの遅いのにね。パパ、まだ寝てるよ。
まあ、あたいの命の恩人だから文句ありません。
行ってらっしゃい。
パパおかえり。昼休み短いのにありがとうね。今日もウンコはしてないよ。お水ちょうだい、のど渇いた。
ママ、バスクチーズケーキまた土産に買って来てくれるかな?
パパは、また帰りにサッカーの練習?
今日は夜練習なんだ。昼は暑かったみたいだけど、夜は、寒くないの? 一回、帰って来るんだね。ママのチーズケーキ食べてから行ったら。
じゃ行ってらっしゃい。昼休みやっぱり短いね。
パパ好きだよ。
10月21日(木)
パパがママに頼まれてノンアルコールのウェットティッシュを買って来た。
お尻拭いてもらうためなんだけどなんかそれ硬いよ。今までのよりゴアゴアしてる。痛いよ。痛いってばママ。それ使わないで。お尻が腫れちゃうよ。パパ残念、また別のを今度買ってきてね。レディのお尻はデリケートなのよ。
パパが三年生の修学旅行のお菓子のお土産をもらって来た。三年生、少し、コロナが落ち着いてやっと行けたんだね。行けて良かったね。
去年なんか、県内日帰りだったみたいだけど、今年は、鹿児島2泊3日。楽しかったんだろうね。みんなお土産買って来てくれたって。中でもGKの格くん、ママにも買って来てくれた。ママ涙流して喜んでたよ。ママ、ずっと裏方で、最近は特にコロナで、現場に姿、現してないからって。格くん、ちゃんと感謝してくれてるんだね。ママ良かったね。パパも最近は出張行かないからパパからのお土産ももらってなかったんだって。
10月22日(金)
ママが整形外科で、MRIを撮ってきた。ここ数年、膝に注射打ったり、リハビリで鍛えて筋肉付けたりしてたんだって。
念の為に撮ってみましょうかと言われて、撮ってみたら半月板損傷だったんだって。
ママ大丈夫? 痛くないの? 今まで気づかなかったの? 注射を定期的に打ってたからかえって気づかなかったんだね。
あたいも右手痛いから注射打ってもらおうかしら。いやいや、あたいは猫。骨折くらいさっさと治してみせるわ。あたいは痛み止め要らない。ゴロゴロの音や振動で早く治るのよ。
人間の治療でもこの作用を利用してる機器があるんだって。サッカーの日本代表の人もそんな機器を使って治した人がいたってパパが言ってた。
でも、ママ大変ね。現役の時も手術したことあるんでしょ? パパ言ってたよ。すぐ治って一週間くらいで帰ってきたって。その時は、筋肉もあったから早かったけど、今度は、そうは行かないだろうって。今は忙しいから来年3月くらいにするかなって言ってた。痛くないの?
また注射で延ばすのかな。
骨折じゃないからあたいのゴロゴロじゃ治せないもんね。今は、審判、ほとんどやってないから大丈夫なのか。
わあ、ママ、それ何?
あたいのベッド?
黄色い縁に白い紙みたいなツブツブシーツ。登れるかな? ママがあたいのベッドを買って来てくれたの? このウサギ用のケージにぴったりの大きさね。
登れるかな? 厳しいな。まだあんまり足動かないし。
でも、やってみよう。
ハア、ハア。
なんとか登ったぞ。なんだかあったかくて気持ちいい。凸凹も丁度良い感じだし、寝てみよう。パパ、ママおやすみ。
「ああ、ちゃうよ、スピちゃん。これは、ベットじゃない。トイレって」
ええ、トイレなの。聞いてない。あたい疲れたからここで寝る。 そっか、この凸凹は、猫用の紙砂だったのね。 ごめんなさい、あたい育ちが悪いもんで分かりませんでした。どこで育ったかも覚えてないんだけどね。
まあ、寝てみるわ、おやすみ〜。
10月23日(土)
今日も隣町の動物病院へ連れて来てもらった。
着いたらもう中で待ってて良いって、呼び出しブザーは無し。ママも飲み物持ってこなかった。今日は、どっちの先生だろう? あたいは、院長先生がいいかな? パパ、女の先生になれって思ってるでしょう? やあね。
ああ、院長先生ね。パパ残念。
ママが最近、ウンコ少な目と説明している。トイレを早くケージの中に入れ過ぎたのかもと言っている。
何、なに?
先生どこ触ってるの、 お腹、張ってるのばれちゃった? そうなのよね。なんかうまく出せなくて、張ってるのよね。食べ過ぎかしら。
あっ、あっ、出そう。先生何やったの? ウンコ出た。看護師さんごめんなさい。あっ、また出た。
「えらい張ってるな……う~ん、今日はこのくらいにしておこう。また張って、出てない様だったら連れて来た方が良いかもしれませんね」
「はい、また来週来てみます」
やだ、わざわざウンコを出してもらいに毎週病院来ないといけないの? 恥ずかしい。大丈夫だと思うけどなあ。あたい自分で出来ると思うけどなあ。先生にはまた会いたいけど。
それにしてもどんな技なの? こんなにあっさりウンコ出て来るなんて。もし、人間にも出来たら便秘薬要らなくなるし、大繁盛するかもね、先生。
「トイレ早く入れ過ぎたせいかなとも思ってるんですよね、上がれなし」
そうそう、ベッドにウンコ出来ないし、なんか出なくなってたのよね。
「別にちゃんとしたトイレじゃなくても高さの低いお菓子のフタとかでもいいですよ。」
「そうか、そうですね。試してみます」
というわけで、ママがそう答えた通り、あたいのベッド、いや、トイレは撤去、さよなら。代わりにお菓子の缶のフタがトイレに。
分かったわ、この中にウンコやオシッコすればいいわね。これならなんとかなりそう。
ありがとう、ママ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます