第12話
その後のことの話をしよう。
救急車で病院に運ばれた俺は緊急治療でなんとか一命を取り留めることができた。その時一緒に白澤が来てくれた。それが俺にとってとても嬉しかった。
黒岡は来てくれた警察に山代を渡そうとした時に痴漢と間違えられかけたそうだ。何故か山代と共に連行されたが、近くにあった防犯カメラの映像と俺たちの証言で冤罪を回避することができた。
俺は治療の為に2ヶ月くらい入院したのち家に帰ることができた。最初の間、俺は病院内では何もできず悶々としていた。何より、部活ができなかったことが俺の心に多大なるダメージを与えた。体を動かしたいが、腹の傷が痛むためすることができない。かといってテレビだって見るものがない。
だから今まで疎かにしていた勉強を始めた。中学の内容とはいえ自分にとってはかなり難しく感じたが、コツさえ掴めば問題なかった。けど、やはり厳しいものは厳しい。そもそも勉強嫌いだったし。
そんなことをしていたらあっという間に2ヶ月が経っていた。意外と早かった。そして学校の登校を再開し、クラスメイトや黒岡、白澤にも会えた。しかし彼らは俺に対して引け目を感じているのが目に見えて分かった。そりゃあ、あんなことがあったもんな。そんなことは覚悟していたし、その通りになって結構悲しかった。
だから俺は彼らを放課後に呼んで、話し合うことにした。
「……」
「……」
「……」
でも俺たちの間に気まずい空気が流れ、あまり話すことができなかった。
そして時が経つにつれて自然と俺たちは関わるのをやめた。
山代が、俺から友達を無くさせた。どこまでも身勝手な女。奴と関わると碌なことにならない。
だからこそ、俺はあの街を去ったのだ。父さんに頼んで。
山代のその後は少ししか聞いてない。精々逮捕された後、精神科病院に行ったくらいだろうか。精神鑑定の結果によって不起訴になったのはかなり腹が立ったが、もうあいつに対してはどうでもよくなっていた。
「……そう、だったんだ」
「ああ。今まで忘れていたんだ。なんでか知らないけど」
「それはきっと辛かったからだと思うよ?」
「どういうことだ?」
「心がそれに耐えられなかったんだよ。だから自然と新谷くんはその記憶に封をした。だから忘れていたというよりは封印されていた、が正解なんじゃないかな」
「……なるほど」
それなら納得がいく。引っ越してから、ある日突然俺はそのことについて思い出さなくなっていたからな。そうか……俺が思っていた以上に俺は苦しんでいたのか……改めて俺の人生やべえな。今までだけでも。
「……取り敢えず、寝よっか」
「ん?───あ」
話し込んで気づかなかったが、もう既に23時を回っていた。
「ごめんな、気づかなくて」
「ううん。聞けて良かった。これで対策が取れるよ」
「……大学始まるの、忘れてないよな?」
「当たり前じゃない」
「ならいいけど……」
高校に進学しなかった山代がうちの大学にくることは絶対にない。しかも、うちの大学はかなりレベルが高い。偏差値で言うのなら55以上だ。そんな頭を山代は持っていないはず。中学の時の成績しか知らないが、あいつはかなり馬鹿だった。だから大丈夫……だと信じたい。フラグじゃないよね?
……なんかめっちゃ不安になってきた。
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