交渉…1

「貴方、一英人さんよね?」

「は?誰だよおま《人の家の前で逆ナンはお行儀は悪いんじゃないかな?お嬢様のすることじゃないと思うけどね》…お嬢様?」


麗珠が話しかけた瞬間、タイミングを見計らったかのようにインターホンから成田の声が聞こえてくる。

”これじゃあ説明ができない!”そう下唇を噛み締める麗珠。

それとは正反対に真顔でインターホンと一英人を見る英。


「すいません。 ここに、持田有がいるって聞いてきたんですけど」

《はい。 体調が悪いようで今横になっていますよ》

「すぐに動けそうにないですか? ないなら持田の家族に連絡とりたいんですけど」

《お姉さんにですよね? 構いませんよ。 詳しくは中へどうぞ》

「うっす。 失礼します。 あ、ところでこの二人はお知り合いですか? お嬢様って呼んでましたし」

《えぇ。 僕の知人ですよ。 恐らく僕に用かと》


その言葉に麗珠が口を開こうとしたが、それを遮るように英が口を開く。


「交渉に来ました」

《交渉? はは、随分ストレートだね。 うん。いいよ。 二人とも一くんと一緒に家に入るといい》

「ありがとうございます」


英は先陣を切って扉をあけて玄関へと入っていく。

それに続くように麗珠、英人が後を追う。


「ようこそ。よく来てくれましたね。 一英人くん」

「恋人が体調不良になったって聞いたんで当然です。 こちらこそご迷惑をかけたみたいで申し訳ありません」

「…はは。 迷惑だなんて一度も思ったことありませんよ。 それじゃあリビングへどうぞ」


リビングのソファに三人を座らせる。


「僕はちょっと有さん呼んできますね」

「ボクも行きます」

「いいですよ。 ここにつれてくるだけですから」

「でも体調悪いんですよね? なら手伝います」


一英人がそう言いながら立ち上がると、さっきまで優しく話していた成田が突然怒鳴り上げる。


「だからてめぇはくんなっつってんだろーが!!」

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