興味に身を踊らせ
シヨゥ
第1話
「剣と魔法、あとは料理が出来れば旅をしたい」
そんなことを言う兄に呆れてしまう。
「モンスターだらけの世界にいきなり飛ばされてよくそんなこと言えるね」
視界の端では村の男たちが押し寄せたモンスターの群れを迎え討っている。
「だって旨そうだから」
兄が指差す先では女達が倒されたモンスターを捌いている。鳥に猪、トカゲと思しきモンスターが次々と肉に変わっていく。
「そんなに腹が減っているのか」
「いんや。単なる食への好奇心。食ったことのない生物の肉はどんな味がするんだろうって思わないか?」
普段も爬虫類の肉とか一般的でないものをを興味で買ってくることが多い兄はモンスターもそれと変わらないとのたまっている。
「あの肉、戦いに参加したら食えると思うか?」
「いやいやいや。素人が戦いに参加なんて危ないって」
兄を見やればその右手に棒切れを掴んでいる。
「やってみなければ分からんだろう」
「待て待て待て。命は一つだ。もっと冷静に――」
「ちょっと行ってくる」
まるでコンビニに行くかのような軽さで兄は戦いに飛び込んでいった。村人達も突然の闖入者に面食らっている。だが、目的が一緒とわかるや協力しだす。もはや何も言えない状況に突入している。
到底真似なんてできるわけはなく、遠巻きにその姿を眺めるしかできない。
珍しい肉目当てに命をかける。そんな食への興味は僕は持ち合わせていない。唯一できる事は、兄が興味に殺されないことを祈る。それだけだ。
興味に身を踊らせ シヨゥ @Shiyoxu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます