リアクション芸人のロケみたいなゆきおんな


 むかしむかしの、寒い寒い北国でのお話です。

 あるところに、茂作(しげさく)とおの吉という木こりの親子が住んでいました。

 この親子、山がすっぽり雪に包まれる頃になると、鉄砲を持って猟に出かけて行くのです。

 ある日の事、親子はいつもの様に雪山へ入って行きましたが、いつの間にか空は黒雲に覆われて、吹雪(ふぶき)となりました。

 二人は何とか、木こり小屋を見つけました。


さて、ここからスタートです。

「息子よここに泊まるしかねえな」

「いや、もう怖いよ。えぇ?こんなとこに小屋なんてあってさ。ちょっと待ってよ本当に。落とし穴とかはやめてよ?」


なんかうるさい息子ですね。早く入ってください。


「じゃあ息子開けろよ扉」

「もうそうやってさ、俺に開けさせようとするじゃん。絶対なんかあるよ、うわぁ開けたくないな」

「うるさいな。じゃあ俺は一歩下がって見守るよ」

「やめてってば、一歩下がってる時点で何かあるのよ。避けてるじゃん!」

「そんなことねぇってうるさいな早く開けろよ」


芸人のロケ…?


「もぉーいくよ、開けるよ、はい!」


えっと、ただの小屋ですよ本当に。


「何も無いのかよぉ!おいスタッフ!お前ら馬鹿かボケェ。」

「息子馬鹿だな。カメラも無いから安心しな」

「それカメラあるやつだよ絶対何かあるじゃん」


とりあえず家には入り、囲炉裏に火をつけ暖をとることに。


「よし、マッチで火をつけるぞ」

「うんうん。マッチは小さくても馬鹿にできないからね」

「はい! シュッ!」


火のついたマッチは息子の方へ


「熱っ熱っ! ええぇ!? お前は視力悪いんか。俺は囲炉裏じゃねぇえよ」

「息子はよく燃えると思ったんだけどな」

「着火剤知らんサイコパスのセリフやぁそれは」


うるさいな本当に。

何はともあれ無事に火はついたようです。

暖をとることは出来たのであとは雪が止むのを待つだけ。いつ止むのやら。


「親父、これいつ止むかな」

「お前が先に死んだら燃料にするよ」

「あくまでも息子を着火剤にしたいんか!お前はバカか!てか、止まない前提やめてよ」


早くしてください。もうゆきおんなが外でスタンバイしてますよ。

なかなか話が終わらないから気まづくて立ち止まってますよ。


「息子よそろそろ寝るが外の様子をちょっと見てくるわ」


さてと、やっと対面ですゆきおんなと。


「わかった」


ガラッ


「外は、え?女の人」

「え、親父女の人って」


父親が話しかけようとすると、その女の人は父親に白い息を吹きかけたところ、父親はたちまち白くなると一瞬に凍ってしまいました。


「えぇ!?親父!?」


慌てて駆け寄ります


「うわぁ綺麗で美人で容姿端麗」


類義語並べただけですそれ。


「おい、親父。うわ!冷たっ!えぇ!?」

「おいそこの若者よ」

「親父変温動物やったんかぁ。そりゃしゃあないわ寒いもんな」


問いかけに全く応じません


「火に近づければ解凍できるのかな凍ってるっぽいけど」

「聞けえ!お前の親父さんはもう死んどるわ」

「うわぁびっくりした いい発声」


危機感ないですね。何でかよく分からないですけど。


「お前は見逃してやるから、今日あったことは誰にも言うなよ」

「それは誰かに言えってこと?」

「違うわ!押すなよ押すなよじゃないわ」


どこまでもボケ散らかす芸人みたいですね。この時代に芸人なんて概念もちろんありませんよ。


「おぉわかったわかった」

「通じたようでなによりです。では」

「事務所どこですか」

「入っとらんわ!」


てことで立ち去りました。


「親父あの人なんだったんだろ。あ、死んでる!」


記憶力無いんですかね。さっきゆきおんなに死亡宣告されてたじゃないですか。

何はともあれとりあえず家には帰って色々葬儀とかあるでしょうが、原作にそんな描写ないので1年後まで飛ばします。


1年後


ある雨の日のことです。美しい女の人がのきしたで雨宿りしていました。


「うわぁ綺麗で美人で容姿端麗」


デジャブゥ。てことで息子はそのおんなの人を家の中に入れてあげて雨宿りさせてあげました。


「本当にお綺麗ですね。肌も綺麗でねぇ、排〇日ですか?」


うわ、最低。ツッコミがいなければただのセクハラですよ。


「面白いお方ですね。私はお雪と申します。行く先もなく困っておりました」

「ハニートラップか?怖いなあ」


息子はしばらく家におゆきをおいておくことを決めました。

二人はやがて恋に落ち、結婚して子供もでき、幸せな日々を送っていました。

ある雪の日のこと、若者はうっかりとあの日の山小屋でのことを話してしまいました。


「・・・てことがあってね、誰にも言うなよ」

「あれほど話してはいけないと言ったのに話しましたね」

「口は災いの元だね」

「あんただ!」


そういうとお雪はその場からいなくなりました。

お雪の正体はゆきおんなだったのです。

それ以来姿を観たものはいないとか。


「え、どこからどこまでがドッキリ?」


全部本当です。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る