エピローグ
エピローグ
空に島が浮かぶようになってからちょうど二年。
海辺の家ですやすやと眠る少女のもとに今日もお客さんがやってきていた。
「……いつまで寝てんだよ、さっさと起きろよ」
呼びかけに応えるようにゆっくりと少女の目が開いた。薄水色の瞳が徐々にあらわになっていく。
「アーヤ⁉︎」
少女は自分のことを覗き込んで泣きそうな顔をしている青年の黒い瞳をじっと見つめた。
「――だれ? どうしたの? 泣かないで?」
「え……?」
少女は固まった青年の姿を不思議そうに眺めてふわりと笑った。
「――お、はよ」
ぎこちなく挨拶した青年に少女は応えた。
「おはよう」
お昼になる前には少女のもとに次々にお客さんが訪ねてきた。
「私のサンドウィッチでお腹壊して眠ってたわけじゃないよね⁉︎」
栗色の髪の寝癖も直さずに飛び込んできた少女はでオロオロとしながらベッドの上に座っていた少女に顔を近づけた。
きょとんと首を傾げた少女から、目つきの悪い金髪の男がおてんば娘を引き剥がす。
「んなわけねーだろーが。二年も眠るほどってお嬢ちゃんこいつに何食べさせたんだよ」
「サンドウィッチに愛情を入れちゃったのがまずかったですかね?」
「……おい、お前妹いるんだからこいつの相手してやれ」
呆れたようにそう言って部屋に入ってきたばかりの兄妹に押し付けた。
「僕がかい? 僕にはもうかわいい妹がいるから君に譲るよ」
「何でそこで僕になったんだよ。キミは自分の探偵事務所に帰るといいんじゃないか?」
妹の方を引き寄せてどこか自慢げに言う男に、話をふられた水色の髪の男は玄関を指さして言った。
「本日は休業の札を貼ってきましたから大丈夫ですわ」
ころころと笑いながら兄の横で妹が言った。
「何で私たらいまわされてるんです⁉︎」
目を見開いていかにもショックだと言いたげな顔で叫ぶ少女の言葉に皆が笑った。
少女もつられて笑顔になった。
開いた窓には白い鳥が止まっていた。そこから吹き込んだ風に乗った海の香りが鼻をくすぐった。
星空に咲け〜ただいま任務遂行中〜 オレンジの金平糖 @orange-konpeito
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