第11話 本社に呼びだされクびを覚悟したアキラ
アキラは「申し訳御座いません」と言ったきり罵声を聞き流して、心の中では『ハッキリ言えよ、首だろう』そんな気分になっていた。さすがにこの部長、ウドの大木とかゴリラとは言わなかった。いや言えなかったのだろう。最近多い若者のプッチン切れ現象でも起きたら自分の命も危ないからだ。
「後日、君の処分が決まる。まぁあまり良い結果は出ないだろうがフッフッフ」
またしても、あの悪夢が~~~~~
アキラに再び自ら描いた失態とは言え、やるせない気持ちがこもっていた。
今回は前の会社とは、明らかにに違う。前の会社ではそれ程の落ち度はなかった。
ただ不景気で真っ先に首を切られただけだ。しかし今回は完全に自分の判断ミスだった。言い訳できる訳もなく。はりっきって空手まで始めて会社の役に立とうとしたのに。
デカイ身体に小さな脳、あの時うまくナイフを取り上げてケガもさせずに犯人を取り押えていたら……嘆くその姿は哀れであった。
その夜、真田小次郎に電話をした。一緒に飲もうと約束を交わした。
真田と会って先日の出来事を話した。流石の真田も同情した。
「そうか、それは又ついてないなぁ、そうガッカリするなよ。飲めやい!」
「とっつあん俺ってさぁ、やっぱり馬鹿かねぇ」
嘆くアキラに、この時ばかりは軽口の冗談は言えない真田だった。
「なぁ山ちゃん俺はそう思わんぞ。そりゃあ無茶に見えるがな。山ちゃんが強引な所があったにせよ事件解決の道を作ったじゃないか、それに最後まで彼女をかばった。きっと彼女は山ちゃんに感謝していると思うよ。見方を変えれば褒められてもいいはずだよ。みんなベテラン警備員の方にばかり目がいっているがな」
さすがに年の功である。見方を変えれば確かに一理ある考えかただ。
「ありがとうよ。とっつあん。しょうがないよ。クビになっても諦めがつくよ」
つづく
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