第9話 アキラ銀行強盗犯と遭遇

 それから更に一ヶ月が経った勤務中の事だった。

 いつもと変わらぬ平凡な勤務のはずが、アキラの出番が突然とやってきたのだ。

 あっては成らぬ事だが、銀行強盗が現れたのだ。

 銀行が閉店となる午後三時二分前の事だ。

 閉店のシャッターが閉まる寸前、二人組の男が入って来た。

 一人がカウンターに飛び乗るやいなや、女子行員にナイフを首筋にあてた。

 もう一人の男は早くも、中の行員にバックを投げつけて「金を入れろ!」と怒鳴った。人質に捕られては、空手を取り入れて自信があったアキラとはいえ手が出ない。

 店長が行員の生命には代えられず渋々バックに札束を積め始めた。

 なんとかならないかとアキラはイライラした。


 同僚の先輩警備員がアキラの反対側で、やはり気を揉んでアキラを見た。

 それが、まずかったアキラは(行け!)と指示されたと勘違いしてしまった。

 状況も考えずに止せばいいのに、アキラは犯人に向って突進したのだ。

 あぁーこのアキラに足りない物、脳味噌のグラム数が少し不足していたのだ?

 女子行員にナイフを向けている強盗の男を見て、我を忘れて頭に血が上りアキラは強引に飛びかかって行った。慌てた犯人は女子行員を片手で抑えたままアキラに向き直りメチャクチャにナイフを振り回した。その弾みで女子行員は腕の辺りから血が吹き出た「キャアーーー」と、大きな悲鳴があがる。

 銀行内はパニックになった。アキラも女子行員に怪我をさせて、またまた冷静を失う。

 もはやこれ以上の怪我をさせてはならない。アキラは猛然と強盗に挑みかかる。

 ガムシャラにアキラは強盗の腕をわしづかみしてナイフを掴み取ったまでは、良いが自分の手を切られてしまった。

 それでも女子行員の前に立ちはだかり身を呈し必死に守ったが、怪我を負わせる失態を犯した事実には変わりはない。


つづく


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る