NABIKOをさらに改造してみた編
第129話 NABIKO・改
「酷い目に遭った……」
天界から竜王の城へと帰還した俺は、倒れ込むようにぐったりと玉座へと座り込んだ。
ルシーファの兄である天使長、ミカエール(全裸)を鞭で延々しばき続けるという、過去最大の苦行を終えてきたのである。
体力はともかく、精神的にキツイ。
しかしそのお陰でゲイビムが、変態四人組の心を完璧に圧し折ってくれたようだ。
連中はダンジョンの攻略を諦め、逃げ出した。
恐らくもう二度と挑んでくることはないだろう。
にしても、もうダンジョンは懲り懲りだ……。
『自業自得かと』
ただあのヌーディストダンジョン、結局、野郎ばかりの地獄になってしまったわけだが、せっかく作ったのだし、取り壊すのも勿体ない。
何だかんだで制作にかなりの時間を費やしてしまったしな。
今回は臨時でゲイビムを召喚したが、どんな奴らが現れても絶対に敗北することのない強力なボスを配置して、後は放置してやろう。
自動モードにしておけば、勝手に宝箱やモンスターを配置したり、発動後のトラップを修復したりできるらしいし。
「そして俺は再び旅に出るぞ!」
気づけば最近ほとんど竜王の城に籠ってたからな。
ここは初心に立ち返って、各地を旅する日々を再スタートしよう。
しかしその前に一つ、やっておきたいことがある。
というわけで、俺はしばらく城の庭に放置していたキャンピングカー、NABIKOの元へとやってきた。
この竜王の里に来るのに使ってからほとんど利用していないため、かなり汚れてしまっている。
とりあえず魔法で洗車してから、
「こいつをさらに改造する」
現在のNABIKOは二階建てだ。
一階にリビング、台所、トイレ(ウォシュレット付き)、バスルーム、さらに俺用の寝室があり、二階には二部屋あって、どちらも寝室として利用していた。
「まず、もっと部屋数を増やす」
狭いのも美少女たちの匂いが充満してハァハァできて良かったが、今のままでは乗員数が限界だ。
もっと色んな
さらに今のところトランスフォームは、
第一形態のキャンピングカー
第二形態のゴーレム
第三形態の飛行機
と、状況に応じて三つのタイプを使い分けることが可能だったが、これも新しいトランスフォームを導入するつもりだ。
そして一週間が経った。
「よし、完成だ!」
というわけで早速お披露目会である。
お披露目会にはティラ、エレン、フィリア、シロ、ルシーファに加えて、竜王の城に入り浸っているクロやチロを初めとするドラゴンたちが参加した。
「見た目は変わってませんね」
「今はキャンピングカー形態だからな」
扉を開ける。
するとそこには広々とした玄関が。
「玄関があるのだっ!?」
「ひろーい!」
今までは扉を開けるとすぐリビングになっていたのだが、ちょっと家らしくしてみたのである。
しかもすぐ横に二階へと上がる階段があって、開放的な吹き抜け構造になっている。
「すでに広さがおかしいんですけど……」
キャンピングカーの天井より、内部の天井の方が高い。
「時空魔法で空間を拡張しているからな」
玄関に入ってすぐ右手の扉。
その先には今までの倍近い広さのリビングがあった。
さらに奥にはダイニングキッチンが。
「ん。いっぱい料理作れそう」
「た、確かに……じゅる」
飲食店の厨房並に設備が整ったキッチンを見ただけで、シロとクロが涎を垂らしそうになっている。
まるでパブロフの犬のようだ。
一階にはサウナ付き大浴場(男女共用にしたかったがそうすると誰も入ってくれなくなりそうなので断念した)の他、遊戯室やリビングよりさらに広い宴会場、それからカラオケルームなども設置した。
「二階にはそれぞれの個室を用意したぞ」
二階へと上がる。
一番手前の扉を開けた。
「ここがエレンの部屋だ」
「す、すごいのだっ!」
筋トレ用の器具なんかが置かれており、いつでもトレーニングに励むことができる環境が整っていた。
ちゃんと剣を振るうスペースもある。
「シャワールームもあるから汗を掻いてもすぐに流せるぞ」
「なんて至れり尽くせりなのだ!」
「これでもう太らずに済むな」
「そ、その黒歴史を思い出させないでくれっ!」
エレンは早速とばかりにバーベルスクワットを始めた。
「一、二、三、四、五……くうっ、足に効くぅぅぅっ!」
気に入ってくれたようで何よりだ。
「カルナさんにしては意外とちゃんとした部屋ですね?」
「俺だってたまには真面目なときくらいあるぞ」
「……たまにではなく、いつもそうならいいんですけど」
筋トレに没頭してしまったエレンを放置し、次の部屋へ。
「こっちがティラの部屋だ」
「これは……」
ティラの部屋には、まるで図書室のようにずらりと大量の本が並んでいた。
本好きのティラが目を輝かせる。
「すごい……もしかしてこれ、全部私のために集めて下さったんですか?」
「当然だ」
「見たことのないものばかりですが……」
一冊を手に取り、ぱらぱらとページを捲ってみるティラ。
「随分と紙質がいいですね……それに印刷も……」
すべて地球から取り寄せた本だからな。
チートスキル〈楽園ショッピング〉で購入したのである。
楽園は本も扱ってる便利なネットショップなのだ。
ちなみに自動翻訳の魔法を使い、この世界の言語に翻訳してあるので、ちゃんとティラでも読めるはずだ。
「どうだ? 惚れ直したんじゃないか?」
「そもそも最初から惚れてませんけど」
そうつっけんどんに言いながらも、ティラは嬉しそうだ。
「デレた。ついにデレた」
「だからデレてませんって!」
そのまま読書に集中してしまったティラを置いて、次の部屋へ。
「で、ここがシロの部屋だな」
中に入ろうとして、
「おっと。この部屋では靴は脱いでくれ。……シロは元から裸足だが」
この部屋だけは畳敷きになっているのだ。
独特の匂いが鼻を突く。
日本人の俺には安心する匂いだ。
「ん。面白い匂い」
そう呟く様子からして、シロ的にも別に嫌いな匂いではないようだな。
屏風や掛け軸、座布団などもあり、そこは完全に和風の部屋だった。
シロとは真逆の雰囲気だが、たぶん気に入ってくれるだろう――というか、そもそもシロはデザインなどどうでもいいと考えるタイプなのでまったく気にしないだろう。
ではなぜわざわざ和風にしたのかというと、アルモノを設置するためだった。
「あんだありゃ? テーブルか? 布団か?」
「あんなの見たことないのです」
首を傾げるクロとチロの視線の先には、そのアルモノが。
部屋のど真ん中に鎮座するそれは――――炬燵。
「っ!」
突然、目をカッと見開いたかと思うと、シロは物凄い速さでその中へと潜り込んでしまった。
「さすがシロだな。見ただけでこの素晴らしさを悟ったとは」
「ん。最高」
シロは炬燵にすっぽりと収まり、首だけ出した状態で頷く。
最初からその至高の入り方をマスターするとは……。
常に快適な温度を保つようにしてあるため、いつ入ってもぬくぬくの炬燵。
テーブルの上にはみかんが常備されている。
もちろんこの炬燵は、食べることの次に寝ることが好きなシロの習性を考えて設置したものだった。
どうやら気に入ってくれたようだな。
「……? 中に何かいる」
シロが少しだけ眉間に皺を寄せた。
炬燵の中から何かを引っ張り出してくる。
シロとよく似た白銀色の髪の美女だった。
ぺむぺむだ。
シロの姉ちゃんの。
「姉さん、何してる?」
「何かに呼ばれた気がしたの~、そしたらさ~、ここに天国があったの~」
至福の表情で応じるぺむぺむ。
一体いつの間に潜り込んでいたんだ……。
ちゃんと鍵をかけていたし、お披露目会を始める前に入るのは不可能だ。
ということは、他の部屋を回っている間に一人でこの部屋に辿りつき、炬燵を発見したのだろう。
「さすが姉さん。寝ることに関しては敵わない」
感心するシロ。
以後、この部屋は姉妹の共同部屋になった。
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