ニジイロライフ

サムライ・ビジョン

第1話 案内人と、オリバーと。

はじめまして。わたくし、人生の案内人を務める者でございます。

名乗るほどの者ではございませんので、「案内人」とでもお呼びくださればと思います。


…おっと、悠長にお話をしている場合ではないようですね。

さあ皆さん、こちらにあります書物にご注目ください。


新たな「人生」が、見えて参りましたよ…


—————

———

——


やぁみんな。おいらが誰かって?

決まってんじゃねぇか!オリバーだよ!

オリバー・フラッグ!

この界隈じゃ有名だけど、新しくこっちに来たってんなら、知らねぇのも無理はねぇか。


おいらが自他ともに認める有名人たる所以ゆえん

それはな?


「やだぁ…急に降ってきちゃった…」

「だな。…にしてもひでぇな…全身ずぶ濡れだよ…」

おっと、確かにスコールみてぇに強ぇ雨が降ってきやがった。だが早とちりしちゃいけねぇぜ? おいらが強烈な雨男だから有名人…ってなわけじゃねぇんだ。


「ちょっと…!見ないで!透けてるからってこっち見たでしょ!」

「…はぁ!?別に見てねぇし!てかそんなことより、寒いだろ?これ着てろよ俺平気だから!」

「こんな薄くて濡れてるカーディガンじゃ意味ないでしょ。…でもまぁ…ありがと」


ヒューヒュー!おアツいねぇ!見ての通り、バス停でおふたりさんが今にもくっつきそうなんだよ。

そして、「雨に濡れた」といえば…?


「…とりあえず、休めるとこ…行かね?」

「…ちょっ!?なに考えてんのよ!ニヤニヤしながら言うんじゃないわよそんなこと!」

「まぁ、雨が止んだらの話だけど…」

「止んだら行くなんて言ってないから!」


…そろそろ出番かな?




「あー!折れるー!」




あの御二方おふたかた、いきなりおいらが叫ぶもんだから、びっくらこいてこっちを見てるねぇ。

さてさて、今日はどんなことが…うおっ!?

急に強い風が吹いてきたぞ!なんかにしっかり掴まってないと吹き飛ばされそうだ!


嘘だろ!?バス停の屋根が飛んでったぜ!

あーあーあーあー…おふたりさん、笑っちゃうくらい雨ざらしだぜ?


「なんだったんだ…今の…って…ええ!?」

「本当よ…急に嵐みたいに…って…は!?」


「お前…化粧落としたら、結構…あれだな」

おいおい旦那ぁ、レディーのすっぴんにドン引きすんのはこくじゃないかい?


「あんた…まさかカツラだったなんて…」

だな。まさかだな。まぁでも、なんだぁ…

スキンヘッドでもかっこいい奴はいっぱいいるからさ!ほら、ワイルドスピードに出てた奴みたいに!マッチョメン!


「…雨、上がったわね」

「そう、だな。…帰り、送ろうか?」

「ありがとう。でも大丈夫よ」




…折れたぁ!折れちまったよ!

そう、おいらが有名な理由は他でもない…


「どんなフラグも折れるから」なんだ。


折れるーとか、折れそうーとか、「折る」ことに関連するワードを口に出すと、それが死亡フラグであれ恋愛フラグであれ、あらゆるフラグをへし折っちまうんだ。


…すげぇだろ?

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