第15話 わたしたちのお母さんはイカれた人で良かった、こんなにありがたく感じる日が来るとは

 わたしと花が家に帰ったら、ちょうど晩ごはんのときだった。皆がテーブルについたらすぐ、いただきますと言って、心の準備をできる間もなく花が早速に本題に入れようとする。


 「お母さん、私とお姉ちゃんが付き合うことにしました」

 「お母さん、わたしたちは話があります!」


 花に余計なことを言わさせないために、慌ててわたしはもっと婉曲的な言い方ですごい大声で話を運んだ。


「ああ、そうなの?話しって、どういうことかしら。ちゃんと聞いてあげましょう、ね、お母さん?」

「本当にその通り、お母さん。ウチもちょうどそう思っていたところので」


 説明すべきね。わたしと花は、お父さんはいないけどお母さんが二人もいる。贅沢だよねええ。羨ましい?


 お母さんは大体最近見てたような、とりあえずその感じの人で。はい、これで説明は終わり。かなりゆるいけど、娘たちの二人が付き合ってることにやっぱり文句がなければおかしい。


 でも言わないと駄目だよね?これからのためにも、ちゃんと両親と話がしたほうは絶対にいいから。お母さんさえにも秘密にしなきゃならないなんて、やっぱつらい思いがしそう。許可もらえないことになる可能性があっても、許可もらう可能性がちょっぴりだけでもある限り、話したほうがその可能性のためにしなきゃいけないことになる。


 とうとうと花と付き合えることの為になら、わたしは何でもする。何でも。自分のお母さんにわたしが妹と付き合っていいですよね〜と 聞くことさえも!


 だから!


 聞くよ!本当にやるよ!今すぐに!


 ……やっぱり怖いけど。


 でもちゃんと聞くから。


 「お母さん、わたしが好きな人ができたけれど」

 「私もよ。お姉ちゃんの好きな人と少し、関係ありますから」

 「そうなの?二人とも?私達の娘が好きな人はどんなひとでしょうね」


 ここまで来たら言うしかなさそう。怖いけど。


 でも言うんだ!


 「花です。わたしたちは姉妹を承知の上で付き合いたいです」

 「愛優内ですよ。妹に相応しいのはやっぱりお姉ちゃんだけだからね?」


 わたしとほとんど同時に、花がわたしと似てて似てぬ答えをお母さんたちに告げる。


 すると、お母さんたちはしばらく考え込む。


  ……


  ……


 謎の間もこの沈黙も、怖いけど。


「別にいいではないか?」

「そう、私もいいと思います」

「えええーと、本当に!?」


わたしたち、姉妹だよ!お母さんがそんなにあっさり頷いてどうするの!ありがたいけど。


「私達が愛優内たちの関係、応援してますから。隠してなくても、怖がらなくて大胆にイチャイチャついてもいいよ。家の中だとしても大丈夫ですよ」


忘れてかけたけど、わたしたちのお母さんはかなりおかしい人。普通に怖い。でも時々便利。今みたいに。どんなに常識を覆すことをしてもわたしたちをちゃんと受け入れてくれるから!


肯定的な態度で助かるけど、まさかこれほどだと思わなくて、一瞬頭が回らなくなってた。だって、わたしと花は姉妹ですし、それなのにお母さんからあっさりに付き合っていいよ、姉妹だとしても!と言われたらどうすればいいのかなんて分かるわけないだろう。


「もう一回だけ確かめたいけど、本当にこれでいいの?わたしたちはその、姉妹だから。世間的にやっちゃいけないことだよ?」

「世間なんか気にしなくても?あなた自身がどうしたいの、愛優内?」


あ、お母さんはそういうの全く考慮してない人だった。そうでしたね。さっきも驚いたけど今のわたしにはそれ以上の記憶力がないから。怖さのあまりでほとんど全部が吹き飛んだ。


 「私達が危ないことじゃないなら花と愛優内がなにしたくても応援する。お母さんとして当然のことだからね。そして君たちは子供もつくれないし。だから私達お母さんがそういう心配をしなくて済むから。自分の娘が全然知らない男の子と付き合ったりするより、娘たち二人が付き合うほうが私達が安心できそう。なので、私達がみたところで、問題がないと思うよ。心置きなく花と付き合ってもいいよ、愛優内」


こんなにあっさり行っていいの?という疑問がまだ残っている。でもこれほど言われたら、あまり疑わなくて、本当に許可もらった!とただ素直に喜んだ方がいい。


「ありがとう、お母さん」


とわたしが微笑む。内心がすごいパーティー状態でも落ち着いて答えるわたし。そのわたしの隣に、あまり落ち着いていない妹がいる。


「お姉ちゃん、付き合っていいならわたしが今すぐキスしたいけど」

「今、お母さんの前だけど」

「お母さんは気にしないと言ってたけど」

「それでも良くないともうけど」

「別に悪いことだとしてもしたいけど」


けど、けど、けど……これ以上反論が思い浮かばない。


でも、付き合ってオッケーと言われても、その直後お母さん本人の前でキスするのはどうかと思ってる……まあ、花が可愛いから大丈夫よね。キスしまいます!


両親の前だとしても……


……いや、やっぱり親の前ではあまりしたくないから!後でするから!


ご飯が終わるまで、わたしと花とわたしの内心が今か後かでキスするべきかについてそのまま議論し続けた。

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兄に告白してふられたので、勢いで妹とのハッピーエンド姉妹百合を目指す!イチャイチャなガールズラブコメを妹としよう! @Nellien

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